東京大学大学院
大泉 泰
今回2009年5月~6月の二ヶ月間沖縄平和協力センター(OPAC)にてインターンシップを経験させていただきました。
OPACで勤務する以前まで私は大学と大学院でそれぞれ社会科学と国際協力学を専攻し、主に途上国への開発援助についての研究を行ってきました。大学の卒業研究で訪れたネパールでは約20年前に日本が行った技術協力が住民に深く吸収されている一方で、供与した機材や車両が反政府勢力に破壊されている状況を目の当りにしました。また一昨年前には国際協力機構のヨルダン事務所においてパレスチナ支援業務に携わり、不安定な中東情勢の中で国際援助機関が果たしうる役割について考えました。今回OPACのインターンに応募したのも、この様な経験から私が考え続けてきたテーマの一つである平和構築の分野での活動を行っていることが大きな理由でした。
沖縄が抱える様々な問題は現在の開発援助が抱える諸問題と多くの点においてつながりあっていると思います。例えば基地問題は社会を維持していく為のコストを誰がどのように負担するのかという点において廃棄物処理施設や原子力発電所、ダム建設等の開発に伴う公害問題や環境問題とつながっています。また7割が国からの依存財源である沖縄県の財政構造と経済的自立について考えることは、同じく先進国からの経済援助に依存している多くの途上国の状況打開を考える上での示唆となります。更に沖縄の歴史背景を勉強し、日々沖縄で暮らしている中でも感じられるのは、日本が決して単純な一枚岩ではなく、多様な歴史認識や文化、民族、価値観などが合わさって重層的に日本国家を形成している様子です。沖縄からはこの様な日本が現在の諸外国と同じように抱えている問題をはっきりと実感することが出来るように思います。
さて、この様に沖縄を通して世界が見えるという問題意識の下でOPACでの実習を行ってきましたが、日々の業務に携わる中でこうした問題について深く考える機会を沢山与えられたことがとても良い勉強になりました。例えば新聞の切り抜き業務などでも地元紙が報じる基地・安全保障関連の情報に細かく目を通すことが出来て、沖縄の社会に基地問題が深く根を張っている様子が分かりました。また仲泊さんや大浜さん、清水さんから伺ったお話からは、書物から得られない沖縄についての生きた情報を教えていただいたように思います。沖縄に来る前は漠然と沖縄の人々の基地に対する意識を単純化して考えていましたが、OPACでの活動を通じて実際は様々な立場の人が多様な意見・考えを持っている複雑さに気が付き、共同体を捉える際に一般化して捉えることの危険性を身に染みて感じることとなりました。
また、平和構築に関すること以外にも思わぬところで収穫となったのはNPO法人で働くことの楽しさを実感出来たことです。もともとNPO活動には大学の授業等を通して興味を持っていましたが、実際に働いてみて自由にアイデアを出しながら仕事を行っていくNPO活動ならではの楽しさを感じることが出来ました。ホームページ作成や、シンポジウムの準備等でも全体を見据えながら仕事を行っていくことが出来るのでとてもやりがいがありました。この経験は今後の私の進路を考える上でもとても意義深いものであったと考えています。
最後に改めて貴重な経験をさせていただいたOPACに心からお礼申し上げます。今後とも機会を作ってOPACの活動と関わっていくことができたらと考えています。ありがとうございました。