インターン体験記

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インターン体験記

田中 亮


 私は、大学院で国際関係学を勉強している。とりわけ平和構築を中心に研究を行っている。沖縄での留学セミナーに参加したのは、紛争の当事者である沖縄側と米国側の双方の意見を聞き、それに基づいて問題解決(和解)のための議論を行える機会があったからである。文献を中心に研究を行っている私にとって、紛争当事者間での意見交換、議論というのは非常に貴重な体験であった。
 沖縄の米軍基地問題は、沖縄側の見解が中心である場合が多いが、今回は、米国総領事館の主席総領事に米国側の視点から米軍基地問題に関する見解を聞くことができた。沖縄に米軍基地を置く理由として法的には、日米安全保障条約があり、地政学的には、共産圏、特に中国の脅威からの防衛の最前線、人道的には、アジアに対する緊急人道支援(津波など)を根拠としている。沖縄県内での基地移転に関して積極的ではあるが、沖縄からの撤退(グアム移転)は、上記で示した根拠に基づき、あまり積極的ではない印象を受けた。しかし、ワークショップに参加した米国側の関係者は、(彼らは政治的な立場の人間ではないが)沖縄の人々の苦しみを考え、理解、解決(和解)しようとする意志が多少なりともあり、当事者双方のコミュニケーションの促進や信頼関係を築くべきだとする建設的な意見が多かったように感じられた。
 沖縄側の意見として、米軍基地=反対というようなイメージが私の中で先行していたが、実際は、米軍基地から恩恵を受けている住民が少なからず存在し、必ずしも県民が一つにまとまっているわけではなかった。また、沖縄県民(若者)と話す機会が多々あり、彼らの何人かは米軍基地というのは、自分たちにとって日常生活の一部であるとして、基地問題に関しては必ずしも積極的ではなかった。しかし、ワークショップに参加した沖縄の方々は、(もちろん今回のテーマに関心があり参加したことは言うまでもないが)ワークショップが進むうちになにか米軍基地問題に対し、特別な感情を抱いているように感じられた。彼らは沖縄と米国のより良い関係に目を向けてはいるが、米軍基地の当事者である米国側に、なにかしら自分の意見を述べる機会や場所がほしいのではないのか。参加者とくに若い方々は、沖縄の建設的な未来を望みつつも、心の中なにかが引っかかり、それを上手く表現または、処理できていないように私は感じた。今回のワークショップではそこまでは踏み込めなかったのが少し心残りである。
 上記のことにより紛争当事者、特に現地の人々の意見は政策決定の段階で反映されないことが多いが、彼らの多種多様な声に傾け、上からのアプローチではなく、下からの現地の人々の視点で問題を考えることの重要さを今回の留学生セミナーで得た。
 最後に、大学院での指導教官である上杉先生は、今回の留学生セミナーへ参加を勧めてくださり、また期間中にはご多忙にもかかわらず、多大なるご意見、ご指導をしてくださった。事務局長の清水さんは、沖縄の歴史から基地問題まで、幅広い事柄をわかりやすく、丁寧に教えてくださった。事務員の仲泊さんは、インターン生として、仕事面で何もできない私に、ご親切に一つ一つ教えてくださり、精神面で大きな支えとなった。事務員の喜屋武は、ワークショップのアシスタントとして何もできない私にごていねいにご指導してくださった。また、ファシリテーターの又吉さん、柴田さんにはワークショップ中、様々なご指摘をしていただき、たいへん勉強になった。同じインターン生の一橋大学大学院の仲本さんと小林さんには、大変お世話になり、研究分野も重なることからとても良い刺激を受けた。これらの方々に厚く御礼を申し上げる。