JICA(OPAC)インターン
東京大学大学院総合文化研究科“人間の安全保障”プログラム
修士課程1年 鳥山聡子
今回、JICAインターンである私がOPACにお世話になるに至った経緯には、このセミナーがJICAからOPACに業務委託されたものであるということ以上の動機があった。まず、沖縄出身ではない自分がせっかく縁あって沖縄にきたのだから、沖縄らしさを打ち出した事業に関わりたいと思った。また、セミナーで扱われる紛争解決や平和構築という分野が、自身の専攻する“人間の安全保障”や教育開発に密接に関係していることから、こういった問題を参加者である途上国側の人々がどのように考えているのか、というところにも興味を持った。これらの関心から、準備段階からこのセミナーに関わりたいとお願いしたところ、幸いにもOPACとJICA双方のご厚意で実現し、セミナーの準備、資料作りおよび当日の運営の一部を担当させて頂くに至ったのである。
先に参加者としての感想から述べると、セミナーを通じていい意味でも悪い意味でもショックの連続だった。まず初日のアイスブレ-キングから、ある参加者に日本のイラク自衛隊派遣問題や沖縄の基地問題についての意見を求められたのである。日本語でも非常に難しい問題、ましてや英語。彼が本国では外交に携わっていたということもあるのだろうが、なかなか踏み込んだ質問を矢継ぎ早に浴びせられ、なんとか会話を成り立たせることで精一杯になってしまった。漠然と考えていた問題を言葉にし、人に伝えるということがいかに難しいか、そして自分の問題意識のもち方がいかに甘かったかを思い知らされ、なかなかショッキングなスタートとなった。
他方、基本的に途上国政府関係者である参加者たちの知識や興味があまりにも政治経済に偏っていたことにも驚かされた。そして、ここで学んだ平和構築や地域復興の手法を国に持ち帰って役立てたいという思いこそあれ、その現場での担い手であり“平和でない”状況下でのネガティブな影響を切実に被るであろう国民・民衆の認識は低かったこともショックだった。これらは自身が教育分野を中心に研究していることもあるとは思うが、とかく民衆からのボトムアップに終始しがちな開発教育の分野で、上にたつ指導者層への教育、特にソフト面での開発に対する意識向上や民衆とのネットワーク構築を図る必要性を痛感した。
もちろん、このようなネガティブなショックばかりではない。日本語の微妙なニュアンスの違いを四苦八苦しながら説明したり、彼らの出身国の文化や言葉を教わったり、時には(これが主だったかもしれないが)他愛もない会話で盛り上がったりと、久しぶりの異文化交流を楽しむことが出来た。人と出会うということ、そしてお互いを理解しようとすることのおもしろさを改めて感じた。自分自身驚いたのは、実は開発援助に関する分野を専攻しながらほとんど興味を持たなかったアジアという地域に対し、初めて興味がわいたことである。きっかけはあるアジア地域からの参加者たちと笑いのつぼが非常に似通っていたことなのだが、ひとつの出会いでこんなにも視野が広がるのかと、人対人の交流が持つ力の大きさを実感した。
最後になってしまったが、このセミナーの運営に携わるにあたり強く感じたことは“常に周りをみる”ことの重要性である。細かい事前準備の大変さはもちろんのこと、それらを広い視野でもって統括し、気を配り、すぐ行動に移すことは、あとから気づきこそすれその場ではなかなか難しく、日々反省の繰り返しだった。
参加者としては、自分の研究における問題意識を様々な角度から、実感と共に見直す機会を得、また運営者としては、日常の生活にもいえることではあるが周囲への気配りや裏で支える人々の苦労・努力を知ることができ、特に精神的な部分で実りある経験となったと思う。このような機会を与えていただき、また私のおぼつかない仕事ぶりを温かく見守ってくださった関係者各位に、心から感謝したい。