沖縄と東ティモール
上杉勇司 / Yuji Uesugi 沖縄平和協力センター事務局長
熱く通じ合う心
21世紀最初の独立国となった東ティモールの青年団が来県した。県内では、国境を越えても響き合う心のこもった温かいもてなしを受けた。例えば、南風原高校の郷土芸能コースや浦添商業高校の国際観光科の皆さんと交流する機会があった。肌の色も違い、言葉も通じない人々の手を取り、一緒に踊ったり笑ったりしている高校生を見て、心と心で交流している様子が伝わってきた。これはすばらしい沖縄の宝であり、それが若い世代に着実に受け継がれている様子を見て本当に羨ましかった。
それから、太平洋戦争中に日本軍の兵隊として東ティモールに駐屯していた県民の方たちが、青年の来県を知って駆けつけてくれた。ティモールでお世話になったお礼がしたいのだという。ティモールという響きを聞いて半世紀以上も前の出来事が鮮明に思い出されたようだ。この時空を超えた思いに、東ティモールの青年たちも心を打たれていた。
さらに青年たちは、2泊3日のホームステイを経験した。各家庭がそれぞれ工夫を凝らした受入をしてくれた。帰り際に別れを惜しんで涙ぐむホストファミリーや青年たちの姿を見ると、短い期間ではあったが充実した思い出作りができたのだと思う。
OPAC第1号事業
さて、今回の東ティモール青年団の来県は、NPO法人沖縄平和協力センターが設立第1号の事業として実施したものだ(国際協力事業団の青年招聘事業)。この事業の目的は2つ。まず、沖縄の戦後復興の事例を通して東ティモールの国造りのヒントを得てもらうこと。そして独立を果たし国造りに燃えている彼らと交流することによって、沖縄の青年たちが彼らの情熱を吸収すること。
果たして、東ティモール青年団は、沖縄戦の悲惨さを語る平和ガイドの声に熱心に耳を傾け、教育機関の復興について詳細にメモを取り、「ニライカナイは海の向こうではなく、自分の足元、自分が今いる所にある」といった言葉に強く頷いていた。また、彼らと交流した琉球大学の学生たちは、彼らからとても良い刺激を受けたようだ。ここに学生たちのコメントをいくつか抜粋する。
「彼らは本当に自分たちの国を良くしたいと思っていると強く感じました。それと同時に、そんな彼らに私達ができることは何なのか考えさせられました。」「何かを吸収しようとしている情熱みたいなものを感じてとても感心ました。」「10年後、30年後の理想像を真剣に話す姿に、情熱の強さというか、責任感や期待が滲み出ているようで、頼もしく思いました。」「他の国の人たちと触れ合うことが自分にとってプラスになると感じました。」
新しい友情の芽生え実感
今回の青年団の受入れにあたり、様々な方の協力があった。皆さん快く協力を引き受けてくれ、交流を心から楽しんでくれた。別れ際に交わした東ティモールの青年たちとの握手からは、新しい友情の芽生えが感じ取れた。一緒に仕事をしてきた仲間たちが涙を流していた。涙が湧き出るほど充実した仕事をすることができて本当に幸せだと思う。これこそ、ボランティアの醍醐味だ。