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米軍再編と沖縄のグランドストラテジー~海兵隊の分散化と沖縄変革のススメ~

平成 17 年3月 特定非営利活動法人 沖縄平和協力センター


はじめに


 地球規模で進む米軍再編の議論が活発化することが予想されたため、本年度は米軍再編が在沖米軍基地の行方に及ぼす影響について検討する専門家による研究会と、沖縄県内の有識者を対象にした講演会を実施した。
  研究会では、米国外交と安全保障を専門とする星野俊也大阪大学大学院教授を座長に迎え、沖縄県内にて安全保障研究に携わる上杉勇司沖縄平和協力センター主任研究員、米軍の前方展開戦略や同盟問題に詳しい川上高司北陸大学教授、米国の外交政策や国防戦略に精通した村田晃嗣同志社大学助教授などの専門家が中心となり、米軍再編の具体像と在沖米軍基地、特に海兵隊に及ぼす影響について議論を交わした。
 研究会は、月 1 回程度開催し、外務省、防衛庁、米太平洋軍司令部、米海兵隊、沖縄県、那覇防衛施設局、沖縄経済同友会、宜野湾市、マスコミ等との意見交換や議論を重ね、実態の把握と分析につとめた。特に、研究委員のネットワークを活用し、防衛庁、外務省、自民党の米軍再編問題担当者との意見交換ができたことは有意義だと考える。
 さらに、沖縄県内の米軍基地視察、ワシントン D.C.の関係者やハワイにある米太平洋軍司令部の訪問を通して、米海兵隊担当者などに研究会の成果を提示し、米国側の意向も把握する機会を設け、検討内容に軌道修正をかけることができたことは大変有益であった。
 研究会は基本的に非公開であったため、多くの人が参加可能となるよう、講演会を研究会と並行して実施し、双方が補完し合い相乗効果が生まれるように工夫した。講演会の講師は主に各研究委員が担当したが、外部からも防衛庁関係者や琉球新報社ワシントン駐在記者などに依頼して、その時点での米軍再編の最新情報を報告してもらった。
 9 月には米国総領事館、沖縄経済同友会との共催で、レーガン政権下で国防総省の日本部長などを歴任したジェームス・アワー氏による講演会を開催し、米軍の視点からの米軍再編が日本に与える影響を考察し、日本における米軍駐留の必要性や意義、将来の見通しなどへの分析を提示してもらった。
 1 月には研究会の中間発表として、沖縄タイムス社との共催で、公開シンポジウム『米軍再編と沖縄』を開催した。パネリストには研究委員の他に元副知事の吉元政矩氏を迎え、活発な意見交換を行った。そこでは、米軍再編の背景にある「固定型脅威」、「モバイル型脅威」への認識と対応、米軍再編と連動した沖縄のトランスフォーメーションとも呼べる抜本的改革の必要性が説かれた。
 このように、研究会と講演会を連動させていく中で、沖縄再編に向けた方向性を提示することができたと認識している。また、研究会を通して沖縄県総務部知事公室基地対策室など、地元の関係者とも密に意見交換を行い、何度となく議論を交わすことができた。さらに、ワシントン D.C.への要請行動を直前に控えた稲嶺惠一知事や翁長雄志那覇市長に対し、研究成果を提示する機会を得たこともここに記しておきたい。今回の研究成果が沖縄の負担軽減に向けた諸策の策定に寄与できていれば幸いである。
 日米安全保障協議委員会 (2+2)が 2 月 19 日に終了した。今後、在日米軍再編協議は加速化される見込みである。そこでは沖縄の負担軽減についても、おそらく集中的に議論される。本報告書が今後の議論の糧となり、米軍の再編をきっかけとした沖縄の負担軽減のみならず、沖縄再生と日本変革に向けて何らかのヒントを提示することができれば幸いである。


1. 米軍の再編を沖縄再生と日本変革の突破口に



1.1. 沖縄の過去・現在・将来と日米関係

 米軍のトランスフォーメーション(再編・変革)やグローバルな態勢見直し(Global Posture Review: GPR)に伴い、前方展開戦略も再検討作業が進められている。この米軍再編が、37 の米軍施設と約 5 万名の米軍関係者を抱える、在沖米軍基地のあり方や兵力構成の今後に直接的な影響を与えることは必至であり、米軍再編に対する沖縄県民の関心は高い。
 さらに、2004 年 9 月にニューヨークで開催された日米首脳会談で小泉首相は「抑止力を維持しつつ沖縄をはじめ地元の負担軽減を考慮すべき」と、「沖縄の負担軽減」に歴代の首相では初めて直接言及した。これは 1996 年に「沖縄に関する特別行動委員会」(The Special Action Committee on Okinawa: SACO)の最終報告が出されたものの、進度の遅ればかりが目立った沖縄の負担軽減問題に対し、改めて強い政治的意思を表明したものとして注目すべき動きであった。小泉首相の発言にブッシュ大統領は「この再編をめぐる協議を通じて、より効率的な抑止力を達成し、地元の負担の軽減にもつながるよう努力していきたい」と答えている。こうした日米のトップ同士の会談を受け、それが米軍再編の動きと連動し、日米協議の中でも沖縄の負担軽減に直結した諸策が検討されており、これからそう遠くない時期に具体的な形も見えてくることになる。
 もちろん、過度な期待は慎まなければならないだろう。今回の再編は、様々な過去の経緯から日本国内でも沖縄にのみ米軍の兵力と施設が集中した結果、沖縄県民が耐えてきた「過重な」負担を削減することにはつながっても、これら「すべて」が「すぐ」になくなることを意味しない。なぜならば、日米両首脳が強調したように抑止力としてのアジア太平洋地域における米軍のプレゼンス(存在)は今日の新しい戦略環境にあっても引き続き不可欠なものであり、それを支える上で、現実的には沖縄をおいて他には妥当な選択肢がないものや沖縄にとっても、その存続が合理的と考えられる適正規模の米軍施設は残るからである。
 実際、第 2 次世界大戦末期には地上戦の悲劇を経験し、戦争の愚かさと平和の尊さを肌で知る沖縄県民が、戦後を通じ、西太平洋地域で最も活発な米軍の出撃拠点基地と隣り合わせの生活を強いられたことは、この上ない歴史の逆説と言ってよいだろう。しかし、一方でこれは戦後日本が選択した日米安全保障体制による米軍の駐留であり、沖縄を拠点とした日米安全保障協力が日本のみならず地域や世界全体に与えた有形・無形の恩恵には計り知れないものがある。そして、私たちは沖縄県民の心身両面にわたる日常的な犠牲なしには日米安全保障体制がこのようには機能しえなかったことを忘れてはならないだろう。私たちは、この事実を 1995年秋の不幸な少女暴行事件が発生するまで日本全体の問題として、あるいは日米関係の問題として十分に認識してこなかったことを恥ずべきである。そして、私たちは、事件の年から 10 年目となる今日、新たに開かれた「機会の窓」を捉え、これまでの努力と英知と良識を総合し、「目に見える沖縄の過重負担の軽減」と「目に見えて効果的な抑止力の維持」とを両立させる方程式を解くべき義務があると考える。
 本研究では、21 世紀に入ってからの安全保障環境の変化に重点を置き、特に SACO 最終報告(1996年)を含む1995年からの10年間の情勢の変遷を概観しつつ大局的な視座からアジア太平洋地域の安定と米軍のプレゼンスの関係について考察するとともに、米軍再編の動きを捉え、それが在沖米軍基地に及ぼす影響とそれへの対応について具体的なオプションを提示する。「目に見える沖縄の過重負担の軽減」と「目に見えて効果的な抑止力の維持」の両立を基本方針とすることで、沖縄問題の解決の糸口を探るだけでなく、この動きを契機として、日本の安全保障やアジア太平洋地域の安全保障のあり方を見直すことにもつながることだろう。また、米軍再編という渦の中で沖縄の将来を見つめることは、当然ながら基地問題や経済問題などの解決に向けた沖縄自身のトランスフォーメーション(再編・変革)を推し進めていくことにもなる。つまり、本報告書で提示する情勢分析を通じ、「沖縄が変われば日本も変わる」という認識を持ち、沖縄の、そして日本の安全保障のグランドストラテジー策定に向けた議論の端緒としたい。


1.2. なぜ今、沖縄から米軍の再編を問うのか

 今回の米軍再編の過程で注目すべき重要な動きとして、日米首脳会談での両首脳の発言とともに、米4軍の「統合化」がある。これに呼応するかのように、日本も 2004年12月に発表した「平成 17 年以降に係る防衛計画の大綱」(新防衛大綱)で、自衛隊の陸・海・空の「統合運用」を強調している。この統合化という新しい動きが日米同時進行となると、米軍内での 4軍統合と自衛隊内での陸・海・空の統合の結果として、日米間での共同訓練や共同運用、基地の共同使用というオプションまでを視野に入れることが可能となる。抑止力の維持と沖縄の負担軽減という視点に立てば、在沖米軍の日本本土への分散、沖縄県内外での自衛隊施設の共同使用などといった様々な展望も開けてくる。
 沖縄の過重な負担を軽減するためには、21 世紀の新しい安全保障環境に対する正確な認識をもって、米軍再編という大きな潮流の行方を見定める必要がある。この流れは予想以上の速さで押し寄せてくる可能性もあり、沖縄県は県民ニーズの再確認とそのニーズを政策に結びつける方途を、中長期的な戦略の中に今すぐにでも位置づけることが重要である。
 今年は戦後60年目という節目の年である。戦後が還暦を迎える今年、第2期ブッシュ政権の「4 年毎の国防計画見直し」(Quadrennial Defense Review: QDR)が発表され、在日米軍再編協議の決着も夏までに行われるとされている。今こそ、この好機を捉えて沖縄からの声を可能な限り一本化し、真に望む現実的なラインを日米政府に伝えていく必要がある。それは、沖縄そして日本のリーダーに厳しい選択と政治決断を迫るものにならざるを得ないだろう。しかし、そのような勇断をここで避けることは、沖縄の負担軽減の千載一遇の好機を逃すことになる。今回の米軍再編は、沖縄自身の変革を可能にする、これまでにない大きなチャンスとして到来しているのである。「平和を希求する沖縄の心」を行動の指針とし、沖縄、日本、アジア太平洋地域、ひいてはグローバルな安全保障を真剣に考えながらも、沖縄問題を解決し、将来の沖縄再生の突破口となりうる「機会の窓」が今まさに開かれたのである。


●「今」が絶好の「機会の窓」である理由
  1. 米国同時多発テロ(9.11)以降の新しい脅威に対応するため、米軍自身が変革・再編を目指している。
  2. 小泉・ブッシュ会談での合意という政治的意思に基づき、事務当局も沖縄の過重負担の軽減を最重要課題の一つにおいている。
  3. 在沖米軍の基地・兵力見直しの議論にあたり、機能の県外・海外移設というオプションも正面から議論される状況になっている。
  4. 軍事技術革命(Revolution in Military Affairs: RMA)による高度技術の利用や、新装備(事前集積船、高速輸送船など)の導入が計画されている。
  5. 米軍・自衛隊の双方で統合運用が進められている。
  6. 米軍基地と自衛隊基地の共用化オプションが本格的に検討されている。
  7. 変化のスピードはこれまでになく速く、今回の決定が今後数十年の米国のアジア太平洋戦略を規定する深い変化となると予想される(早ければ夏頃には開催が予想される次の日米首脳会談での「新日米安全保障共同宣言」の発表、あるいは新規QDRの発表、ラムズフェルド国防長官の勇退の時期までに一定の方向性を打ち出せなければ、沖縄の意向を日米の安全保障政策に反映させる時機を逸してしまうことになる。そして、「今」を逃すと、当面「次の機会」は容易には訪れないと予想される)。
  8. 以上のような要素がすべて重なって動きうる時は今までになかったと考えられる。

2. 米軍再編の現状と沖縄再編に向けた課題



2.1. 米軍再編の背景

 米軍は常に変容を重ねてきており、軍事技術の進歩に伴って過去にも米軍の再編は進められてきた。その中で今回の「米軍再編」とは、現在のブッシュ政権下で本格的に始動した地球規模での総合的なトランスフォーメーションのことである。その始まりは、2001 年にブッシュ大統領が就任した際、ラムズフェルド国防長官に戦略や兵力構成などの包括的な見直しを命じたことにある。これを受けたラムズフェルド国防長官は、ネットアセスメントが専門のアンドリュー・マーシャルに命じ、20 の特別チームを作って第 2 次世界大戦以降の米軍再編の流れを追わせ、抜本的な見直しを始めた。
 その後、徐々に今回の再編についての具体的な内容が明らかにされていった。2001 年 5月の発表では、トランスフォーメーションの要点として、規模削減と機動性や柔軟性を重視した 21 世紀型の軍隊への変容を遂げることの必要性が掲げられた。2003 年 11 月には、地球規模での軍事態勢の再編に関する声明を出し、続く 2004 年 8 月の大統領選挙前には、アジアや欧州の在外米軍を今後10年間で6~7万人削減することを軸とする具体的な再編計画を演説の中で発表した。


●米軍再編に関する発表などの年表
年 / 月 発表形態 内容
2001年1月 大統領による命令 ラムズフェルド国防長官に戦略、兵力構成などの包括的な見直しを命令。この抜本的再編の検討は「ラムズフェルド・レビュー」とも呼ばれる。
2001年5月 大統領による発表 米軍全体の規模削減と並行して、機動性を重んじた柔軟性のある 21 世紀型の米軍に変革すると発表した。
2003年11月 大統領による声明 地球規模での軍事態勢の再編に関して、大量破壊兵器の開発を進める「ならず者国家」やテロなどの新たな脅威に対応するため、在外米軍の再編について同盟国や友好国と本格的な交渉を開始するとの声明を発表した。
2004年8月 大統領による演説 今後 10 年間で、欧州とアジアに駐留する約 20 万人中 6~7 万人(このほかに軍属および家族が 10 万人)の米兵を本国に戻す。内訳は 73,000 人いるドイツには約 30,000 人のみを残して削減、韓国からは約12,500人の削減で、2008年まで 3段階に分けて削減すると発表した。

●トランスフォーメーションの 3 つの分類
1 Transformation as adaptation 戦略環境の変化に対応して兵力編成の変革を行う
2 Transformation as defense reform
(Revolution in Business Affairs または RBA)
行政改革の流れの中で国防総省内の効率化と業務変革を行う
3 Transformation as military-technical revolution
(Revolution in Business Affairs または RBA)
軍事技術革命による兵器システムの変革を行う

 ブッシュ政権下で米軍再編が始まった背景には、戦略環境の変化、財政的・人的制約、4軍統合の深化がある。ブッシュ大統領の発表や声明などでも分かるように、米国をとりまく戦略環境の変化が今回の再編に最も大きな影響を与えている。特に大きな要因としては、冷戦終結でソ連の脅威が消滅し、大規模な全面戦争の可能性が低くなったこと、2001 年 9 月11 日に発生した米国同時多発テロ(9.11)をきっかけに国際テロリズムに代表されるような新しい脅威が増大してきたことが挙げられる。
 冷戦終結後、米軍の再配置は段階的に実施されていたが、その内容は十分ではなかった。今回のように将来的な必要性の部分に焦点をあてた積極的な変革とは違い、不必要な部分の削減が中心で、進展についても芳しくなかった。そのような中で 9.11 が発生し、その時の「怒り」と「怯え」に基づいて、2001 年の QDR では国防戦略を、対国家を基調とした脅威基盤戦略からテロなどに対応するための能力基盤戦略に転換したのである。
 9.11 以降、必ずしも国家の形態を持たず、移動可能な国際テロ組織などに代表される非対称的な「モバイル型脅威」が、米国の安全を脅かす存在としてにわかに脚光を浴びるようになった。また、旧ソ連のように米国のグローバルな覇権に挑戦するような国家は存在しなくなったとはいえ、米国の局地的な覇権や安定を脅かしかねない国家による「固定型脅威」が完全に消滅したわけではない。ソ連の消滅によって、固定型脅威が大幅に薄らいだ欧州地域に比べ、アジア太平洋地域では依然として固定型脅威が残存し、むしろその危険性が増大している現状さえある。以上のような戦略環境の変化に伴い、米国では本土防衛の必要性が強く認識されるとともに、アジア太平洋地域での同盟国の防衛に対しても早急かつ新たな対応を迫られるようになった。


●米軍再編の背景にある米国の脅威認識

 ソ連の崩壊により最大の脅威が消滅し、さらに 9.11 後の現在では、ロシアは米国にとっての友好国となった。その結果、欧州地域では固定型脅威に対処するため展開していた米軍兵力の必要性が大幅に低下し、ドイツを中心に米軍基地の削減がすでに始まっている。これと連動して、欧州連合(EU)を中心に域内の安全保障体制の強化や緊急展開能力の整備に努めている。米軍の再編の余波を受けて、すでに欧州では安全保障体制の再編が現実の動きとなって現れてきている。
 他方、アジア太平洋地域では、固定型脅威にあたる朝鮮半島や台湾海峡という不安定要因を依然として抱えている。それらはむしろ、北朝鮮の核保有宣言や中国の台頭など、懸念要因としては増加傾向にある。一方で東南アジアなどでは、2002 年 10 月のインドネシアのバリ島での爆弾テロが象徴するように、新しい脅威にもさらされている。つまり、この地域では冷戦期に比べ、従来の固定型の脅威が深刻化してきたかたわら、モバイル型脅威も登場し、多様な脅威への対応が迫られている。実際には、このような現状認識が米軍再編の原動力となっているのである。
 2001 年の QDR では、日本海周辺からペルシア湾周辺にいたるまでのアジア大陸沿岸地域を「不安定の弧」(arc of instability)と呼び、今後紛争の可能性が最も高い地域と指定していた。対象となる脅威の幅が広がり、米軍は多様な脅威への備えのために、機能維持ではなく、機能強化が求められており、実際にグアムへの潜水艦の配備、西太平洋への空母の追加配備、米陸軍第 1 軍団司令部の日本への移転計画など、この地域での米軍増強はそうした現状認識を反映したものと理解できる。
 しかし米軍には、限られた人材や資源をもって、より多くの脅威に対応しなければならない(more with less)というジレンマがある。つまり、財政的・人的制約が米軍再編に影響を及ぼしているのである。象徴的な例としては、ブッシュ政権は財政赤字に直面している一方で、アフガニスタンやイラクといった国への莫大な駐留経費を負担せざるをえなくなっている。アフガニスタンやイラクへの10万人以上の派兵は、州兵までも動員する事態に陥っており、人員不足も深刻さを極めている。この問題の解消を図るために、例えば世界中の有志連合からの協力と支援を期待している。
 残る背景としては、従来からの各軍種別のトランスフォーメーションと連動して、4 軍統合の深化に比重を置いたことがある。軍事技術革命を踏まえて、陸・海・空・海兵隊の統合についても推進し、機動的かつ迅速な対処を可能とすることを目標とした。2001 年 11 月には、国防総省内での「トランスフォーメーション局」の創設によって体制も整備され、本格的な変革が進められている。
 脅威基盤戦略から能力基盤戦略への転換が進められる中で、固定型脅威への備えとして特定の地域に貼り付けていた戦力を、ハブ・スポークス式の拠点を確保していくことで、迅速かつ柔軟に展開させることにより、広範囲をカバーする戦略を米軍は目指している。下表で概説するような、主要作戦拠点(MOB)、前進作戦拠点(FOS)、安全保障協力対象地域(CSL)といった各種の拠点を確保することで、戦略的な分散化による広域抑止対処システムを構築していくことが、グローバルな米軍再編の狙いとなっているのである。


●基地の 3 つのランク
1 Main Operating Base (MOB) 主要作戦拠点
大規模な兵力・装備の展開拠点で、政治的に安定した同盟国もしくは米国領土
2 Forward Operating Site (FOS) 前進作戦拠点
装備の事前集積拠点も兼ねた伸縮自在な即応能力を持った施設で、作戦部隊によって交代で使用されることが意図されている
3 Cooperative Security Location (CSL) 安全保障協力対象地域
小規模な部隊が駐留する基地

2.2. 在日米軍再編問題

 以上、米軍再編の背景を述べてきたが、日米安全保障条約に基づいて駐留している在日米軍も、当然のことであるが、日本の意向に関わらずその影響を受ける。
 在日米軍の再編自体は、これまでも何度かあった。その代表的なものが 1996 年の SACO最終報告である。民主党のクリントン政権下で進められたこの再編作業は、1995 年の少女暴行事件に端を発している。SACO 最終報告では土地の返還、訓練及び運用の調整、騒音軽減、地位協定の運用改善が主要 4 項目として掲げられ、現在も進行中とされている。
 しかし、この 10 年間で米国は民主党政権から共和党政権へと変わった。在日米軍の再編の方針もブッシュ大統領の主導によるものとなり、クリントン時代にまとめられたSACOはすでに過去のものになったとする向きも出てきた。そして、この 10 年間には、朝鮮半島問題、テポドン危機、台湾海峡問題、米国同時多発テロ、アフガニスタンやイラクへの攻撃と、多くの外的要因も重なり、戦略環境の変化に伴う米軍のあり方の見直しが求められるようになったのである。
 現在の在日米軍再編問題は、2002 年の日米安全保障協議委員会 (2+2)において、日本に駐留する兵力やその構成について議論されたことが始まりである。同委員会では、国際テロリズムや大量破壊兵器の拡散といった脅威を再認識し、新たな安全保障環境における日米両国の役割や兵力構成といった防衛態勢の見直しの必要性について協議を重ねることに合意した。その後、2003 年 11 月にブッシュ大統領が同盟国との協力強化について協議すると発表した頃から本格化し始めた。
 米軍再編に対する日本の基本方針は、2004年12月に閣議決定された新防衛大綱および2004年度から次の5年間を対象とする『次期中期防衛力整備計画』(中期防)によって明確に示された。今後 10 年間の日本の防衛力のあり方を定めた新防衛大綱では、より安定した安全保障環境構築のために、日米安全保障体制の重要性を再認識して米軍の抑止力を維持することと、在日米軍施設の過重な負担の軽減を目指すことに触れている。これにより日本の明確な立場が定まり、米国との米軍再編を睨んだ具体的な案件の検討が可能となった。
 2005年2月の 2+2 では、国際テロリズムなどの新しい脅威や朝鮮半島、台湾海峡といった従来からの不安定要因に対処するため、日米同盟を強化するという共通戦略目標が確認された。また、自衛隊と米軍の役割や任務の再検討も行われ、抑止力を維持しつつも在日米軍再編を加速させ、沖縄などの地元負担の軽減と、SACO 最終報告を着実に実施することなどが具体的に合意された。
 この 2+2 を受け、今後は分科会において、現在検討中の米国本土(ワシントン州フォートルイス)にある米陸軍第1軍団司令部のキャンプ座間への移転案、在沖海兵隊の海外を含む県外への移転案などが集中的に議論される見通しである。
 ところで、米軍再編と沖縄との関係がクローズアップされたのは、2004 年 9 月の小泉・ブッシュ会談で米軍の効率的な抑止と沖縄の負担軽減が合意されてからであると述べた。その後、日米間でこの問題がはっきりと意識され、優先課題として取り組んでいく姿勢が明らかにされたのである。SACO 最終報告で最大の懸案事項であった普天間飛行場の返還すら暗礁に乗り上げている現状に対し、今回の在日米軍再編協議で在沖海兵隊の海外も含む県外への分散化が検討されていることは、つかみ取るべき新たな道程なのである。


2.3. 米軍再編に対する日本の対応と情勢分析

 SACO最終報告の作成に向けての協議が日米で進められていた1996年頃と現在とでは、日本国内においても大きな情勢変化が起こっている。そして、それに伴い日本人の脅威認識にも変化の兆しが見受けられる。そこで、以下では当時から現在までの変化を概観し、米軍再編と関連する項目を挙げ、そのインプリケーションをみる。
 近年、日本人が安全保障上の危機感を現実的なものと受け止めるようになった大きなきっかけは、1998 年の北朝鮮によるミサイル発射事件である。日本中を震撼させた北朝鮮の行動は、その後も核問題、ミサイル問題、拉致事件、工作船といった形で続き、日本人は脅威を具体的に目の当たりにすることになった。その他にも中国の台頭や台湾海峡の緊張状態についても、中国の軍事力増強、領有権問題、海底資源問題として、具体的な表出が始まっており、懸念が広がっている。
 冷戦終結直後の日米関係は、漂流していると指摘されるほどに方向性が定まっていなかった。日本国内では日米安全保障体制の必要性が問われ、他方では「ビンの蓋論」といった論議も生まれ、まさに日米同盟の将来のあり方を模索する時期であった。それでも 1996年以降は日米関係深化への転換期となった。日米間では日米安全保障共同宣言、SACO最終報告、日米物品役務相互協定(ACSA)などが整備されていった。日本国内でも日米防衛協力のために指針(新ガイドライン)、周辺事態法、有事法制が次々と整備され、米国でもナイレポート、アーミテージレポートなどの発表があり、これらを経ることで、日米は協力関係を堅持する方向で固まっていった。米国が日本を活用すると同時に役割分担を求めることで、日米安全保障協力関係が向上するに伴い、自衛隊と米軍との協力関係も一層強化されていった。これらの環境整備により、有事の際の日本の動きや日米の協調体制などが確立に向けて進んでいくことで、米軍の有事駐留を担保する枠組みも揃っていった。
 以上の変化と関連して、自衛隊も大きく変化を遂げている。1991 年、湾岸戦争に際してペルシア湾での掃海作業のため、自衛隊を派遣したことはあった。それが 1992 年に国際平和協力法が施行されると、自衛隊は初めて正式に海を渡り、国連平和維持活動(PKO 活動)としてカンボジアで任務を行った。それが近年に至るにつれ、1996 年のゴラン高原、2002 年の東ティモールなど、PKO 活動や人道的な国際救援活動の一環で、国外で活動することが急速に多くなり、最近ではイラクの復興への協力や 2004 年の暮れのスマトラ沖地震への迅速な対応を実現している。
 このような自衛隊の変化は、任務の多様化として捉えることができる。国内、時には海外での災害救助、国際的な平和維持活動、人道復興支援活動と、これまでの自国を守る(専守防衛)という単一の目的から、時代に合わせて役割の幅が広がってきている。ただし、自衛隊の役割が拡大したからといって、必ずしもそれに比例する形で米軍のプレゼンスに変化が生まれるとは限らない。自衛隊がどこまで新しい役割を担えば、米軍のプレゼンスがどのように変化するといった明確な方程式が示せるわけでもない。とはいえ、先の 2+2 では、全般的な方向性として日米で戦略目標を共有化したのであり、今後は日米間での役割分担が進むことは避けられない流れとなったのである。


2.4. 沖縄の脅威認識

 1996 年から今日に至るまでのグローバルな安全保障環境の変化や日本国内の情勢変化にともなって、沖縄県内の情勢にも変化が表れ始めた。しかし、その変化の度合いは、沖縄と日本本土とでは必ずしも足並みが揃っているとはいえない。
 1996 年当時、沖縄県民にとっての脅威の源泉は米軍の存在であり、日常生活の中で発生する騒音や事件・事故こそが脅威であった。その後もこれらの問題は恒常的に発生し、SACO 最終報告で最大の焦点であった普天間飛行場の返還も、目標期日を過ぎても一向に実現しないことなどから、脅威は依然として身近に存在する米軍であるとの意識が強い。
そして 2004 年 8 月に発生した沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故が、多くの沖縄県民に米軍が及ぼす具体的な脅威を再確認させることとなった。つまり、一般的にいって日本本土では、北朝鮮などに代表されるような対外的な脅威を現実的なものとして認識し、在日米軍の存在をそのような脅威を抑止するものとして容認する傾向があるのに対し、沖縄ではそのような対外的な脅威以上に米軍の存在自体が自らにとって直接的な脅威であると認識している。そのため、沖縄と日本本土との間では米軍の存在に対する評価で温度差が生じている。
 もっとも、日本本土でも、横田飛行場(東京都)、厚木海軍飛行場(神奈川県)、岩国飛行場(山口県)などの周辺地域では、普天間飛行場と同種の騒音問題や墜落事故の危険と隣り合わせの生活を強いられている住民がいる。このことを考えると、沖縄と日本本土との間の温度差は、日常的なことばかりが原因であるとは言い難い。その起源は、第 2 次世界大戦中の「沖縄戦」にまでさかのぼる。沖縄戦での悲惨な経験やその後の 27 年間に及ぶ米国統治の記憶から、軍隊に対するある種の違和感が沖縄県内では色濃く残っている。現に米軍と自衛隊の協力が進む中、自衛隊と米軍による基地の共同使用や、離島防衛のために沖縄県内への自衛隊配備が増強されようとしているが、このような動きに対しても沖縄県内では懸念が示されている。
 しかし、これまで確認してきたように、沖縄をとりまく周辺地域での脅威は、かつてないほどに危険度が高まっている。もちろん米国の脅威認識、日本の脅威認識、そして沖縄の脅威認識ではそれぞれ温度差があるものの、現実としての脅威の変化を無視するわけにはいかず、米軍再編の背景にある中国の台頭や北朝鮮の核ミサイル問題など、対処しなければならない問題は山積している。とりわけ中国の台頭や軍事力の近代化は、沖縄県の一部である尖閣諸島をめぐる日中間の領有権争いを顕在化させ、また台湾海峡の不安定要因としても懸念される。ここで具体的に挙げたことは、まさに沖縄県民一人ひとりの安全保障と直結した問題である。日中間や中台間で有事となった場合、沖縄がその被害から逃れることはまず不可能であろう。アジア太平洋地域での冷戦期からひきずる固定型脅威の最前線は、沖縄にあるといっても過言ではない。一方では東南アジアでのテロなど、モバイル型脅威も迫っている。そこで沖縄は、双方の脅威への対応を早急に求められているのである。このような周辺の安全保障環境における脅威に加えて、先述した米軍が駐留することから派生する脅威への対応も講じなくてはならず、沖縄の負担を軽減させつつ、多様な脅威への十分な抑止力を確保するといった難題を日米両政府は課せられている。


2.5. 沖縄の戦略的重要性

 沖縄の戦略的重要性については、冷戦期より様々な議論がなされてきた。主な議論としては、沖縄の位置はこの地域の主要都市から 1,000 海里(1 海里=1,852m)以内にあり、地理的に重要であるというものである。冷戦の終結により、その重要性は相対的に低下してきたと指摘される一方で、朝鮮半島や台湾海峡を巡る状況は不安定化しつつあり、作戦領域は南下し、むしろ沖縄の重要性は冷戦期に比べて高まったという指摘もある。
 沖縄の戦略的重要性には、まず洋上の要所に浮かぶ陸地という特性に起因したものがある。陸地の限られた太平洋地域において、米軍が作戦を展開する拠点のひとつを沖縄は提供している。とりわけ現代の戦闘の勝敗を左右する航空優勢(制空権)を確保するためには、作戦領域内に飛行場を確保しておくことが非常に重要である。有事に即して広範囲から召集をかけることが可能な部隊と異なり、移動が非常に難しい飛行場や弾薬・燃料庫といった拠点を予め作戦領域内に前方展開(事前集積)させておけるという点から、沖縄の戦略的重要性は語ることができる。その意味では、嘉手納飛行場・弾薬庫の存在が沖縄の戦略的価値を非常に高めているといえる。
 しかしながら、空軍や陸軍と違い、洋上を拠点に作戦を展開できる海軍や海兵隊の場合には、空母戦闘群や事前集積船団を活用することにより、ある程度は陸上展開拠点の機能を代替することができる。したがって、以下でその分散化について検討することになる海兵隊にとっての沖縄の戦略的価値とは、軍事的観点からは絶対不可欠なものではなく、今後は安全保障環境の変化や軍事技術の革新に伴って、前進作戦拠点(FOS)あるいは安全保障協力対象地域(CSL)といった有事の際の展開拠点として位置付けられていく可能性もある。
 他方、地理的要因以外からくる沖縄の戦略的重要性の根拠には、実際に沖縄に基地が存在するという既成事実がある。例えば嘉手納飛行場規模の飛行場を新たに建設するためには、用地の確保の難しさに加え、莫大な建設経費がかかる。沖縄には、空港、港湾、弾薬・燃料庫、兵舎など主要な基地・兵站機能がすでに整備されているということが、沖縄の戦略的重要性を一層高めているのである。すなわち、沖縄に現在も米軍施設が集中する理由には、その地理的要因に加え、歴史的な経緯を含めた政治判断として沖縄に重要な基地機能が揃えられてきた点があることを指摘することができる。この要素を加味すれば、海兵隊にとっての沖縄の戦略的価値には、米海兵隊にとっての唯一米国以外に前方展開する遠征軍の主要作戦拠点(MOB)として整備されたハブを形成している事実を挙げることができる。
 これらに加えて、沖縄の戦略的重要性を考える上で認識を深めるべきことは、米国は軍隊の運用をアジア太平洋地域、ひいては世界規模で考えており、在沖米軍として沖縄という範囲で切り離して捉えてはいないという点である。この傾向は次第に進んでおり、沖縄に駐留する米軍の作戦地域は、いまや狭く見積もってもアジア太平洋地域なのである。
 アジア太平洋地域では、冷戦時代の残滓である「固定型の脅威」のみならず、9.11 以後にその認識度が急激に高まった非国家主体やテロリズムのように、いつどこに発生するのかを予測することが難しい「モバイル型の脅威」に対しても備えなくてはならない。このような多様な脅威への対応を、広大な領域で可能とするためには、各部隊の機動力を向上させるとともに、緊急兵力展開の足がかりとなるハブ・スポークス型基地網を地域大で整備していく方向で兵力配置の見直しが進むことになるだろう。すなわち、拠点の分散化と機動力の向上を図り、有事の際に目的地への集中が即座にできるような態勢を敷いておくことが要求されているのである。
 もちろん、沖縄が戦略的な要石のひとつであることには変わりないが、このような態勢を整えるためには、日本本土やグアムといったアジア太平洋地域の既存の施設へ戦略拠点の分散化を進めることが、むしろ必要とされているのである。そのことによって、より広範囲な脅威への対処能力を高めることになり、ミサイル攻撃に対する脆弱性を低めることにもなる。したがって、基盤となる拠点施設の分散配置と部隊の機動力の向上による分散配備によって、地域単位での戦略的な抑止力を維持することが、米軍利益の確保や日本の安全保障、そして沖縄の負担軽減の観点からも、最も合理的なオプションとなりえるようになったのである。
 したがって、本研究では、今まで「沖縄の戦略的重要性」を主張することによって、沖縄からは米軍基地機能は動かせないという前提が形作られ、ある種の思考停止となっていた状態から脱し、戦略的重要性の中身を軍事的な観点からも精査・吟味することによって、米軍の抑止力の維持と沖縄の過重負担の軽減を実現する連立方程式を解く鍵を模索することを目指した。次項では、海兵隊の分散化というキーワードを、その連立方程式を解く鍵にして具体的なオプションを検討していく。


3. 海兵隊の分散化と普天間飛行場の行方



3.1. 海兵隊の分散化による沖縄の負担軽減と抑止力の維持の両立

 沖縄における米軍プレゼンスの合理化と、沖縄にとっての過剰負担の軽減との両立を考慮した場合、4 軍の中でも再編の焦点となるのは海兵隊である。もともと、今回のグローバルな米軍再編の動きの中で削減の主要な対象となっているのは陸軍であるが、沖縄県内に駐留する陸軍は限られており、沖縄の負担の軽減といった政治的課題がある中では、実際に在沖米軍の施設面積で75%、軍人数で62%という高い割合を占めている海兵隊が注目されることは必然であろう。さらに海兵隊としても、今後は同盟国との共同作戦を、海上拠点と分散化を組み合わせる形で進めていく構想(Combined, Sea-based, Distributed Operations)として打ち出している。実際に、戦略拠点や部隊の分散化を進める場合に、多様な能力とその機動力において海兵隊に及ぶものはなく、積極的な再編といった観点からも海兵隊の分散化を検討することは理に適っている。
 海兵隊の分散化を図る上で、SACO 最終報告の焦点でもあった普天間飛行場の返還は、重要な鍵を握っている。第 31 海兵遠征部隊(31MEU)の機動力の要であるヘリ部隊の拠点となる普天間飛行場が果たしている機能(以下では普天間機能と記す)をいかに代替させるか(代替施設をどこに確保するかを含む)によって、分散化の流れが明確に変わるからだ。したがって、以下では普天間機能が沖縄県内に残留する場合(オプション①~⑤)と、海外を含めた県外へ移設される場合(オプション⑥~⑧)に大別して、分散化のパターンを別表のように検討した。
 現段階では、戦略環境についての将来の状況があまりに不透明であるため、検討にも幅を持たせている。そこで、オプションを検討する際には、「段階的に」「複数オプションの組み合わせで」「すべてを一度に」という3つの可能性も念頭に置く必要がある。さらには、海兵隊の海上拠点と分散化構想が実用化していくに伴い、陸上拠点である在沖米軍諸施設の中には、その有用性が低下してくる施設もあり、変化については中長期的なスパンで検討していかなくてはならない。もちろん、海兵隊と陸・海・空軍との関係、自衛隊との関係についても、海兵隊のプレゼンスを検討する方程式に組み入れて計算することも必要になろう。また、それぞれのオプションにあわせた兵站機能の移転についても同時に検討しなければならない。これらの点は議論の過程で考慮したが、議論が複雑になるため別表では省略した。


3.2. 海兵隊の分散化のオプション

 別表の①~⑤は、普天間飛行場の機能(第 1 海兵航空団、特にヘリ部隊である第 36 海兵航空群)が沖縄県内に残ることを前提とした場合のオプションである。普天間飛行場を自衛隊の管理下に置き、平素の運用は必要最低限の整備に止め、事実上の有事利用とする構想もあるが、これでは日常必要とされる訓練ができないため、海兵隊としては日常的に使用可能な飛行場を別途、沖縄県内に確保することを要求するであろう。
 ただし、今までの流れからすると、最大の注目を集めてきた普天間飛行場そのものは閉鎖される可能性が高く、そのため普天間機能の県内移設先として、辺野古沖、下地島、嘉手納、伊江島などが検討されている。SACO の教訓と日本政府の財政状況を勘案した場合に、大規模な飛行場を新たに建設することは考えにくく、さらには普天間飛行場の返還を早期に実現するといった観点からも、既存の施設を活用・補強するオプションが選択される可能性が高い。ただし、飛行場から港湾施設や生活・レクリエーション施設へのアクセスを確保するという点から、下地島や伊江島にある既存の飛行場を代替施設とする場合には、宮古島や本島との間を結ぶ橋梁を建設する必要があり、いずれにしても実用可能になるまでには時間がかかる。他方では、米軍再編の 4 軍統合化の方向性と合致させた嘉手納飛行場への統合案もかねてより浮上しているが、周辺住民の負担軽減の観点からも、また嘉手納飛行場以外に沖縄県内で有事対応の滑走路が必要であるとする海兵隊の立場からも、受け入れの難航が予想される。これらの普天間機能の県内移設は、将来の県外移設を前提とした暫定的な措置として進められる可能性もある。
 一方、⑥~⑧のオプションでは 31MEU の県外移転に伴って、普天間機能も県外へ分散化することを前提にしている。しかしながら、第 3海兵遠征軍(ⅢMEF)の中で最も即応性の高い 31MEU が、朝鮮半島問題が解決する前にグアムまで後退することは考えにくい。さらに、31MEU の任務には離島の奪回、民間人救出作戦(Non-combatant Evacuation Operation: NEO)、台湾海峡危機への対応が含まれており、台湾問題が解決するか、自衛隊にこのような能力が備わるまでは、暫定的に日本本土に移り、時機を見てグアムへ移転することも考えられる。
ただし、現状のままでは、グアムに 31MEU を受け入れる余裕はなく、施設を補強・拡充する必要がある。さらに海兵隊の即応力や機動力を高めるためには、高速艇などの装備の拡充も必要であるとされている。
 ②~⑧では、キャンプ富士などの米軍の既存の施設や矢臼別などの自衛隊の施設への移転を検討している。海兵隊の任務に北朝鮮での作戦も含まれているとはいえ、北海道への移転は部隊が実際に行動する可能性のある東南アジアや中東との環境があまりにも違いすぎるため、軍事的には避けたいオプションであると考えられる。
 ⑦では普天間飛行場から海兵隊が撤退した後、自衛隊が管理し、緊急時に限り海兵隊が再展開するオプションも考えられている。この場合は、代替施設を確保する代わりに、普天間飛行場の事実上の有事使用を確保するというものである。有事展開の別の方法として、⑧のように緊急時に限った嘉手納飛行場への海兵隊の展開というオプションもあるが、離発着能力の制限など、その可能性は未知数である。


3.3. 普天間飛行場の行方

 以上のオプションを様々な角度から検証していくと、選択肢④か⑤が、今回の米軍再編に伴う在沖米軍の変化の中核になると思われる。とりわけ、海兵隊の即応性と緊急対処能力の維持を図るためには 31MEU を残留させる可能性が高く、かといって小泉首相が「沖縄の負担軽減」を言及した背景を考慮すれば、①~③のオプションでは、実質的な負担軽減にはつながるかもしれないが、政治的なメッセージとしてのインパクトが弱い。以上のことから、将来的な趨勢としては⑦や⑧のような形態に向かいつつあるものの、今回の米軍再編に伴う暫定的な着地点としては、④か⑤のオプションが選択される見通しが最も高いと言える。そして、その場合の鍵を握るのは、やはり SACO 最終報告と同様に、普天間機能の代替施設をどこに確保するのかという点であろう。2008 年には岩国飛行場の滑走路の沖合展開が可能となる。さらに将来的には、海兵隊の機動力の向上と海上拠点化構想の拡充に伴って、例えば大型高速事前集積船団によって普天間機能を代替することが可能になるかもしれない。
したがって、米軍の再編と沖縄の負担軽減の問題は、今回をもって収束させるのではなく、今後とも引き続き検討されていかなくてはならないものである。


●在沖海兵隊の分散化オプション
No オプション 主要残留部隊 移転人数 移転候補地 普天間機能 備考
現状維持 (SACO方針) すべて 0 人 なし 県内残留
(辺野古、下地、嘉手納、伊江)
 
第12連隊(第3大隊含む)の県外移転[砲兵] 31MEU、第4連隊、第1航空団、第3戦務支援群 800~
2,000 人
富士
矢臼別
日出生台
県内残留
(辺野古、下地、嘉手納、伊江)
ⅢMEF司令部の県外移転
第4連隊(1個または 2個大隊規模)の県外移転[歩兵] 31MEU 、 第12連隊、第1航空団、第3戦務支援群 1,000~
3,000 人
富士
東千歳
(矢臼別)
(日出生台)
(グアム)
県内残留
(辺野古、下地、嘉手納、伊江)
ⅢMEF 司令部+第3海兵師団司令部の県外移転
②+③ 31MEU 、 第12連隊、第1航空団、第3戦務支援群 1,800~
5,000 人
富士
東千歳
矢臼別
日出生台
グアム
県内残留
(辺野古、下地、嘉手納、伊江)
ⅢMEF 司令部+第3海兵師団司令部の県外移転
④+第3戦務支援群 31MEU、第1航空団 4,600~20,000 人(家族等も含む) 富士
東千歳
矢臼別
日出生台
グアム
県内残留
(辺野古、下地、嘉手納、伊江)
ⅢMEF 司令部+第3海兵師団司令部の県外移転
31MEU(+第12連隊)+第 1 航空団の県外移転 第4連隊、第3戦務支援群 9,000~
18,000 人
富士
東千歳
矢臼別
日出生台
グアム
県外移設
(鹿屋、岩国、厚木、千歳、グアム)
ⅢMEF 司令部+第3海兵師団司令部の県外移転、普天間の自衛隊管理の有事駐留も検討
⑤+⑥(第3戦務支援群も含む海兵隊のほぼ全面移転)+有事対応 有事駐留に対応(定期的な訓練を実施=北部訓練場、ホワイト・ビーチ残留) 約 25,000人 (家族等も含む) 富士
矢臼別
東千歳
日出生台
グアム
県外移設
(鹿屋、岩国、厚木、千歳、グアム)
ⅢMEF 司令部+第3海兵師団司令部の県外移転、普天間の自衛隊管理の有事駐留も検討
⑦+有事非対応 なし(海兵隊の海上拠点化確立に伴う) 約 25,000人 (家族等も含む) 富士
矢臼別
東千歳
日出生台
グアム
県外移設
(鹿屋、岩国、厚木、千歳、グアム)
緊急時は嘉手納飛行場などで対応
  1. 第12連隊は砲兵部隊であり、ⅢMEFの隷下の部隊で最も即応態勢の整った 31MEU と組み合わせて作戦を展開することもある。
  2. 第4連隊などの部隊は部隊派遣プログラム(UDP)によって任期6 ヶ月の交代制を敷いているが、これらUDP 部隊の本籍地を沖縄に置きつつも、作戦や訓練で常時県外に展開させることで事実上の移転(不在状態)を実現するオプションもある。
  3. オプション①~⑤の場合は、県外代替施設整備を進める間に限定した普天間機能の暫定的な県内移設となる可能性もある。

●在沖海兵隊の編成


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4. 沖縄が変われば日本が変わる ~沖縄再編・変革・再生に向けた展望~

 これまで米軍再編や日本周辺の情勢変化などを検証し、米軍の抑止力と対応能力を維持しつつも、沖縄の負担を軽減する方策について、海兵隊の分散化をキーワードに具体的な部隊移転のオプションを検討してきた。SACO 最終報告の際には、基地の返還に焦点が当てられ、基地面積の縮小による沖縄の負担軽減が画策された。他方、ここで検討してきたことは、不動産としての米軍施設に着目するのではなく、むしろ訓練や作戦のためにローテーションをすることが一般化している米軍部隊の分散配置・移転による沖縄の負担軽減であった。そして、このような沖縄の負担軽減策が、実は米軍再編の流れの中での海兵隊の進化とも整合性を保ちうる点を指摘した。
 米軍再編という巨大な変化の波が押し寄せてくることで、もはや日本そして沖縄も自らの変革を避けることはできないだろう。今回の米軍再編によって沖縄に駐留する米軍のあり方が大きく変容していく中で、沖縄も米軍再編の流れに受動的に従うばかりではなく、自らの将来設計に向けた明確なヴィジョンを持ち、その方向性を示していかなくてはならない。まさに今、沖縄の主体性が問われているのである。
 そして、現在に至る歴史的経緯の正確な把握と、現状に対する総合的で冷静な分析が、よりよい方向性を導き出すきっかけをつかむことにつながる。米国政府に対する直接的な働きかけやトップダウンによるアプローチのみでも、時には現状を打開する糸口になるだろう。
しかし、このような糸口が着実な形となって実を結ぶためには、中央政府や事務方との緊密な連携と調整を欠かすことはできない。沖縄と中央政府との間にある温度差を縮めるためにも、双方の信頼回復と両者の良好な関係の構築に専心しなくてはならない。今回の米軍再編の荒波を受けて、沖縄でそのような機運が高まることを期待したい。日本の一部であるという事実を踏まえつつも沖縄の独自性を十分発揮するためには、中央政府に対して沖縄の声を一本化し、正確な認識を踏まえて、ボトムアップの堅実なアプローチで、合意を積み重ねていくことが必須である。
 ポスト米軍再編の課題は山積している。それらは米軍施設の跡地利用であり、職を失うことになる米軍基地従業員の新規雇用の受け皿や地代の確保であり、実相は経済問題が中心となる。過去 60 年の間に意識的に、あるいは無意識のうちに「造られた」米軍基地と補助金依存型の経済から脱却するための戦略と政治力、そして、それらを実現していく実行能力・調整能力をもったリーダーシップが求められている。沖縄が日本の各地に先駆けて変革を断行することで、中央政府にも影響を及ぼし、日本の変革を促すことにもなるだろう。
 沖縄の歴史を次世代が振り返る時、現在の分岐点での県民の選択が、現実的かつ賢明な選択であったと判断されることを目指したい。そこで、この米軍再編の動きを、沖縄変革を進め日本の改革を促す千載一遇の好機と捉え、「沖縄から考える 21 世紀のグランドストラテジー」を策定していく端緒としたい。沖縄が変われば日本が変わるのであり、それは沖縄県民の手による沖縄の再生にもつながるだろう。沖縄のリーダーシップに期待したい。


5. 巻末資料



5.1. 安全保障関連の動き(日・米・沖)


5.2. 基地と経済の関係と試算例
●基地の経済効果指標


●基地面積を半減させつつも最大限の経済効果を維持する方策

県内残留施設名 選定理由
1、キャンプ瑞慶覧
2、牧港補給地区
宿舎や補給所で事故の心配が少なく、訓練場や飛行場のような騒音問題もない。面積が約 3.9%で、従業員数 3,273 人(37.7%)、地主数 6,272 人(19.4%)、地代約 127 億円(16.8%)を抱える。
3、嘉手納飛行場 その戦略的価値が高いだけでなく、沖縄県民の雇用の場、あるいは地代の観点からも返還に際する影響が大きい。キャンプ瑞慶覧、牧港補給地区と併せると、全従業員数の約 7 割、地代の約 49%が維持される。
4、八重岳通信所
5、慶佐次通信所
従業員はいないが、通信施設であるため、騒音も事件・事故も起こさない。地主も八重岳通信所が市町村、慶佐次通信所が1人であり、双方から返還要求がない。
6、トリイ通信施設
7、泡瀬通信施設
従業員はいないが、通信施設であるため、騒音も事件・事故も起こさない。また、戦略的にも重要な施設である。
8、キャンプ・ハンセン
9、キャンプ・シュワブ
訓練場も含んでいるが、訓練の多くを県外で実施することで負担は軽減できる。宿舎も併設され、約 700 名の従業員を抱えている。
10、奥間レスト・センター 戦略的に不可欠ではないが、事故・騒音の心配がなく、雇用を創出する。
11、キャンプ・コートニー 司令部であり、騒音や事故の心配もない。
12、陸軍貯油施設 従業員は少ないが、騒音問題はなく、事件・事故の心配も少ない。
13、ホワイト・ビーチ地区 戦略的に重要であるが、事件・騒音問題が少ない。
14、嘉手納弾薬庫地区 戦略的に重要であるが、事件・騒音問題がない。
残留経済効果総計 面積約 135.5 平方 km(57.2%) 地主数 24,400 人(75.4%)
従業員数 7,907 人(91.1%) 賃借料約 621 億円(81.8%)

5.3. 沖縄に駐留する自衛隊概要


5.4. 地域の安全保障-日本における米軍駐留の分析

ジェームス・アワー
(ヴァンダービルト大学公共政策研究所日米研究協力センター所長)

 冷戦が終結し、その影響を強く受けた欧州では、1991年には 25万人の米軍が、現在では10 万人以下に削減された。一方、アジアに展開する米軍の数は、冷戦終結以前と変わらず、削減されていない。この理由には北朝鮮の脅威と中国の存在が挙げられる。
 北朝鮮の現指導者は金正日だが、彼は軍部に操られている可能性も考えられる。北朝鮮が核抑止に関する認識をもっているかも疑問で、その実体は曖昧である。北朝鮮は、所有するミサイルに生物化学兵器や核を搭載する可能性もあり、射程圏内の日本には現実的な脅威である。また中国の将来の動向もはっきりとせず、日本の懸念材料となっている。
 日米両国は、世界中で最も豊かな国であり、民主国家である。そして両国とも安定した繁栄を求めている。そこでの日米同盟というものは、「勝つため」のものではなく、「安定のための担保・保険」である。この同盟関係が順調に進めば抑止力にもなりうるし、安定のための礎になる。そして何よりアジア太平洋地域、ひいては世界の安定に貢献する枠組みとなる。それゆえ日米同盟にかかるコストは保険料であり、安定には不可欠なものである。この観点からいえば、小泉政権の自衛隊の海外派遣(インド洋・イラク)決定は、戦略的な方針であり、安定への担保である。そしてこれは、北朝鮮の挑戦に対する保険にもなりうるものである。
 米軍の前方展開の見直しが世界レベルで進んでいるが、冷戦終結や 9.11 テロを経ても、アジア地域、特に日本の重要性は変わらない。冷戦期、アジア太平洋地域において米国は海軍力の面で旧ソ連より優位であった。一方、欧州での陸軍の展開という面では旧ソ連の方が優位であった。そこで、旧ソ連が陸軍を用いて西側諸国に侵攻する可能性に対して、応戦のための拠点をアジアに維持していた。しかし、旧ソ連はいまや崩壊し、また RMA も進展しており、前線に部隊を配備することは重要ではなくなってきた。しかし北朝鮮、中国という懸念材料がある以上、在日米軍の重要性は変わらない。北朝鮮、中国という日米両国の懸念材料が存在する点で日米同盟が重要であることに加えて、アジア太平洋地域に多国間安全保障があまり発達していないという事実から、日米同盟の重要性は語ることができる。
 アジア太平洋地域では、ASEAN、APEC、ARF などいくつかの多国間地域組織が存在し、それは大変意義のあるものだが、その効果は限定されており、欧州地域で見られる EU ほどの発展・効果がみられていないのが現状である。このため安全保障の枠組みが存在しないアジア太平洋地域において、日米同盟は重要になってくる。
 以上のようなことから、在沖米軍の重要性は依然として高く、日本の防衛のため、そして実際に湾岸戦争の際に在沖米軍から兵士が派遣されたように、その他の地域やテロ対策に貢献している。現在、普天間飛行場移設が問題になっているが、確かに普天間は危険な場所である。しかし重要なことは、普天間飛行場を拠点としている航空部隊は第 7 艦隊の一部をなしているということである。米国は、この航空部隊の基地を普天間に置くことを要求しているわけではない。しかし、第7艦隊には、この航空部隊が必要であり、第7艦隊がこの航空部隊を安全に効率よく運用できることを大前提としている。
 確かに沖縄は基地問題で負担が大きい。それゆえ日米政府はこの沖縄問題が抱えている負担をしっかりと認識しなければならない。そしてそれと同時に、日本の安全は、米国によって保障されているということが現実であり、日本は在日米軍の有効性を認識するべきである。


5.5. ワシントン DC から見た米軍再編の動き
森暢平(琉球新報社ワシントン駐在記者)
世界の米軍再編

 これまで米軍再編が唱えられてはいたが、2004年の8月になって初めてブッシュ大統領はその規模を明らかにした。大統領はオハイオにおいて 6~7 万人の海外駐留米軍を米国本土に撤退させると述べたが、その内容は韓国より 1 個旅団約 14,000 人(旅団規模から推定)、ドイツより 4 個旅団約 56,000 人(旅団規模から推定)だと推測される。
 米軍再編において理解しておかなければならない点は、基地には3種類あるということだ。①MOB(主要作戦基地):沖縄の嘉手納基地のように、兵士とその家族も駐留する従来型の大規模な基地。②FOS(前方作戦拠点):ホンジュラスのソトカノ空軍基地のように常駐ではなく兵士がローテーションする基地。③CSL(協力的安全保障拠点):豪州のように軍隊は駐留せず、有事の時に使用できる空港などのある場所。再編には政治的側面も加味せねばならず、計画上の再編と現実の再編には隔たりがあるはずである。現に在韓米軍の再編案は 2 年間の延期が決定している。


沖縄を巡る環境

 米陸軍に新しい緊急展開部隊(Stryker Brigade Combat Team: SBCT)が編成され始めている。陸軍の21世紀ヴィジョンのプランとして提案された、地域紛争初期段階における対応を主任務とし、緊急展開能力に特化した軽装備の旅団戦闘チームである。この部隊の設置によって、海兵隊と陸軍の機能が近づいてゆくのではないかと予想される。さらにこの部隊は、ハワイ、韓国、アラスカ、ドイツなどに配置されると思われる。そうなると、アジア太平洋地域で緊急展開できる部隊は沖縄の海兵隊のみではなくなり、その重要性は減少してゆくのではないだろうか。


沖縄の今後の対応への提案

 米国は世界を見渡した防衛を考えており、そこへ沖縄県民の痛みを訴えても、周波数が違うので聞き入れられない。沖縄の意図をどうやって米国の周波数にあわせるかを考えるべきである。具体的な提案としては、米国の有力者にアピールすること、有力コラムニストに記事を書いてもらうこと、この件に関してきちんと英語で対応できる人材をワシントンや東京に常駐させることなどが考えられる。


5.6. 米軍再編の戦略的背景と沖縄
星野俊也(大阪大学大学院教授)
新たな脅威と「不安定の弧」への認識

 9.11 テロ事件以降の米軍再編の動きを理解するためには、米国が最近、しきりに口にする「不安定の弧(arc of instability)」という地域に対する米国の脅威認識への理解が出発点となるだろう。
 冷戦時代の米国の脅威認識は、宿敵・旧ソ連が中心だった。熱い戦いとなった朝鮮半島やベトナム、それに核戦争の瀬戸際に世界を追い詰めたキューバの情勢などを別にすれば、クレムリンの動向を追跡することに多くの精力が注ぎ込まれていた。それが最近では、イラクの首都バグダッドや、そこを基点とした「スンニー・トライアングル」であるとか、ファルージャやサマラといった都市、あるいはアフガニスタンのカブールやマザリシャリフ、パキスタンの「トライバル・エリア」など、脅威に対応するために知識を要する範囲が大きく広がってきた。その理由は、テロとの戦いで、湾岸地域から中央アジア、インド洋など、広範囲にわたって出撃拠点を整備し、作戦行動を行うようになったからである。一般に地理に疎いといわれる米国人だが、昔から、「米国人は戦争を通じて世界地理に詳しくなる」という言葉もあった。今日でも、テロとの戦いで米国は世界に目を向けるようになった。米国に対しての新たな脅威を構成する対象地域の総称が、いわゆる「不安定の弧」である。その中身は、北アフリカやバルカン半島にはじまり、かつては「肥沃な三日月地帯」と呼ばれたペルシア湾岸地域や中東、それに続いて、コーカサス地方から中央アジア、そして、近年、テロ事件が頻発している東南アジアや朝鮮半島を抱える北東アジアにいたる地域である。日本から見るとあまり意識されていないが、米国にとっては、キューバがあるカリブ海地域や、麻薬組織などの問題を持つ南米までも「不安定の弧」の一部を構成していると考えている。これらの地域をワシントン D.C.中心の正距方位図法で表したのが別図だが、ワシントンが脅威に包囲されているように見えていることがわかる。
 地理的な軸に時間的な軸を加えることで顕在化する脅威の対象として中国の存在があることも付け加えないといけない。


米軍再編の流れ

 米軍再編の背景には、現在の米軍の配置が冷戦終結後も十分な変更が加えられなかったという現実がある。本来はより早く議論されるべきだったが、9.11事件による「怒り」と「怯え」がきっかけとなって、遅ればせながら動き始めたのが現在の再編である。米国本土や同盟国の安全保障と地域覇権国の台頭の阻止といった発想が根底にあると考えられる。ここには、ブッシュ大統領の信仰心やネオコンの影響も考えられ、米国人の持つ民主主義を広めるという伝統的な使命感もあるだろう。また、米国のもつ「世界の警察とならなければいけない」という使命感もうかがえる。そこで我々が着目すべき点は、米国の行動は、世界のためなのか、それとも自国のためなのかという問題である。結論をいうと、9.11事件以降の米国は、世界全体を見渡した国際公共利益を促進するよりも、自国の国益のためのみに動いているように思え、これが世界の懸念材料である。
 具体的な再編の内容としては、「不安定の弧」での突発的な事態にすばやく対応できる体制の整備である。そのため、司令部機能となるハブと出撃拠点という区別がなされ、出撃拠点については各地に“lily pads”と呼ばれる出撃拠点が形成されている。これには時間の短縮と、現地での対応という 2 つの意図が組み込まれている。また同時に、この変化により、米国以外の同盟国・友好国の役割の拡大が期待されている。


沖縄への4つの含意

 今回の米軍再編は、沖縄にとって、どのような含意をもつのだろうか。
 まず第 1 は、米軍が沖縄に駐留する戦略的意義をどう捉えるかを考える必要がある。もちろん、反米・反基地の考え方もあるが、米国の戦略と日本のニーズをあわせて考え、米軍の役割をさぐる必要性がある。その場合、日本に米軍基地を置く戦略的な意義は変わらないものがある。しかし、その規模は必然的に縮小傾向を歩むと考えられる。
 第 2 に、米軍の再編が基地や兵力の縮小を意味するのであれば、日本側の役割の拡大も含め、変化を「補完」する作業についても検討する必要がある。そこでは、日本が自国の安全だけではなく、地域の安定やグローバルな安全(国連を通じた集団安全保障の問題)への取り組みの拡大といった動きも含まれる。
 第 3 に軍の役割の変化にも注目すべきだろう。破壊するだけの軍から復興人道支援や災害救援など建設的な役割をも担った軍への変化についても認識すべきだろう。
 最後に、米国に対して、自らの役割認識についての変化を促すことは必要だろう。米国は、国際公共財の提供を大らかに行う時期と自国の狭隘な国益を優先する孤立主義的な時期を行ったり来たりする傾向がある。今はネオコンの発想と結びついて自国中心だが、そうした米国は変わらなければならないだろう。
 現在の世界の安全保障を考える上で、米国の役割は不可欠であり、その存在抜きには、問題の対応策を正確にとられることができない。その米国に対して、我々が今、どのような形で働きかけができるか、を真剣に検討する重要な時期にきているのではないか。



5.7. 米軍再編問題と日米同盟のゆくえ
川上高司(北陸大学教授)
米軍再編問題とは何か

 米軍のグローバルな再編(GPR, Global Posture Review または Global Defense Posture Review)にともなって、米軍の前方展開戦略の見直しが進められている。この大規模な米軍再編は、今後20年から 30年、もしくは100年の日本の安全保障政策を決定づける重要な転換期にきていることを示している。
 言い換えれば、これは、安全保障上の大地震であり、米国が震源となり、日本全体、引いては世界に影響を及ぼすことが予想される。
 最終的には、沖縄の米軍基地問題にも響いてくるのは明白であり、このような重要な転換期だからこそ、日本から有利な方向に導ける方策がないかを検討する絶好の機会である。
 この GPR は、ブッシュ大統領が就任後、ラムズフェルド国防長官に国防計画や兵力の見直しを命じたことに始まる。これにより、アンドリュー・マーシャル率いるチームを中心に 20 チームを編成し、抜本的再編の検討を進めさせた。これが、いわゆる「ラムズフェルド・レビュー」のスタートだ。これを現在入手することができれば、今、米軍がどのようなことを考え、どういう方向に進もうとしているのかがすべてわかることになる。ただし、こちらは当然のことながら入手不可能なので、現在公表された情報などを総動員して米軍再編のゆくえを可能な限り占ってみたい。


米軍再編の背景

 米軍再編の背景には、4 つの要因が考えられる。ひとつは、戦略環境の変化である。冷戦時代の米国の国防戦略は、ソ連と対峙し、そのソ連を脅威とした国防政策が中心であった。その後、イラクと北朝鮮の二正面戦略が続き、9.11 米国中枢同時テロ後の国防は、国家主体の脅威基盤からテロに対応するための能力基盤の戦略に転換した。つまり、国家を対象とせず、非対称型に基づいた戦略を確立したのである。
 次に、財政的制約や兵力不足があげられる。米国は、アフガニスタン攻撃やイラク戦争に州兵を派兵したうえ、有志同盟を活用し、使えるものはすべて使っている。現在の財政状況をクリントン政権時代と比較すると、当時は財政黒字、現在は赤字であるにもかかわらず、駐留費に莫大な資金を投じている。
 さらに、地政学的変化も米軍再編につながっている。9.11後にロシアがNATOの準加盟国になり、ロシアは米国にとっての友好国となった。その結果、欧州正面に展開していた米軍兵力の必要性が低下し、欧州ではドイツを中心に米軍基地の削減がすでに始まっている。
 最後に、米軍統合化の進化があげられる。いわゆる「トランスフォーメーション」(変革)である。米国内でも、トランスフォーメーションという言葉の使い方に混乱が生じている。
 しかし、トランスフォーメーションの種類は、戦略環境に対応した米軍編成の変革(Transformation as adaptation)、国防総省の中での効率化と業務変革(Revolution in Business Affairs)、軍事革命による変革(Revolution in Military Affairs)の 3 つに分類できる。ブッシュ政権はこのうち軍事革命に比重を置き、従来からの各軍種別のトランスフォーメーションに拍車がかかった。2001年11月の国防総省「トランスフォーメーション局」の創設により米軍の変革体制は整備された。


リアル・プレゼンスからヴァーチャル・プレゼンスへ

 米軍は従来のリアル・プレゼンス(恒常的な前方展開兵力の陸海空海兵隊群兵力)からヴァーチャル・プレゼンス(洋上移動兵力の空母戦闘群、水陸両用即応群、遠征群、事前集積集団などと米国本土兵力の緊急展開部隊、戦略爆撃機など)へと比重を移している。
 その理由は、米国は国家ではない脅威、つまり非政府主体を国家安全保障上の脅威としたことから、より小型化し機動力のある米軍をめざしていることに起因している。それにより、陸軍を米国本土へという流れが起き、ドイツや韓国からの撤退へとつながっている。
 また、QDR2001(4 年毎の国防計画見直し)では、即応統合任務部隊(SJTF, Standing Joint Task Force)を充実させることを明記し、太平洋軍等といった地域指揮組織の下に SJTF を創設し、前方に置くことによってテロなどに対処するとされている。また、同盟国の軍隊と米軍との統合化もますます進化していくものと考えられる。


基地のランクづけと新構想

 米軍は、今回の再編で基地を 3 つのランクにわける構想を持っている。これは、2005年3月の米国国防戦略(The National Defense Strategy of the United States of America)で表明された内容である。それは主要作戦拠点(Main Operating Base: MOB)、前進作戦拠点(Forward Operating Site: FOS)、安全保障協力対象地域(Cooperative Security Location: CSL)の 3 つで、米軍のヴァーチャル・プレゼンスへの移行をカバーするため、「ハブ基地」(MOB)を中核に、ここからいくつかの「スポークス基地」(FOS+CSL)を結びつける「ハブ・スポークス型基地」への移行が伺える。
 また、国防総省では、中国を念頭に置いた「北東アジア司令部」創設構想があり、アジア太平洋で米太平洋軍司令部の他に「北東アジア司令部」を創設し、台湾有事等に備えることも想定しているとも言われている。


日本はハブ基地へ

 今回の GPR では、在日米軍の司令部機能が強化されることが予想される。ワシントン州にある米陸軍第 1 軍団司令部がキャンプ座間(神奈川県)に移転されると、SJTF が常設されるであろう。その結果、自衛隊が米軍に統合されてくる可能性も出てくる。
 横須賀の米海軍第 7 艦隊司令部、沖縄の米海兵隊第三海兵遠征軍と併せて、日本に戦力展開拠点の要素がそろう。その際に、問題となっているのは、米軍の活動範囲が日米安全保障条約のいわゆる極東条項(フィリピン以北)を超え、日米安全保障条約の空洞化につながることである。
 ベトナムやイラク戦争等に在日米軍からすでに派遣がなされており、今なぜ問題かという疑問がでてくるが、現時点でこの点をクリアーにしておかないと日米安全保障条約は空洞化し、深刻な問題になりかねない。日本政府は、現実的には現行の日米安全保障条約で運用可能とし状況を切り抜けると思われるが、在日米軍の機能強化を認めるのであれば、なし崩し的にではなく、条約改定まで踏み込んで検討すべきである。
 日本政府として、日本の国益を定め、安全保障の問題を真剣に検討していかなければならない。日本にとって重要なのは、米軍の前方展開が後方にさがり、自衛隊と一体化していくことである。その時に日本が確たる戦略を持たずに、米軍の戦略の中に組み込まれていくと、米国が中国を潜在敵国とした場合、日本は期せずして中国と対峙する可能性も出てくる。
だからこそ今、日本は独自の外交と安全保障戦略を真剣に考えていく必要がある。


5.8. 米国の政局が米軍再編に及ぼす影響と日米同盟の将来
村田晃嗣(同志社大学助教授)
米国の大統領選

 今回の選挙では、東・西海岸を民主党がとり、中西部・南部で共和党が勝利した。そのためか、メディアは選挙を通じて、こぞって「2 つの米国」または「分断された米国」というキャッチフレーズを使った。しかし、米国がこれまでに「一つの米国」または「統合された米国」であったことはない。「2 つの米国」という表現は決して誤りではなく、多くの場合は複数であり、これは奇異な現象などではなく、米国史のほとんどにこの現象があったと考えてよい。
 イラク情勢が厳しい中でのブッシュ大統領の勝利は、支持基盤とされる宗教右派の影響と言われ、そのため外交政策を大きく転換できないのではないか、という議論や予測がある。この議論を2009年にふり返って、確かに転換できなかったとしている可能性は否定できない。
だが、今の段階で変わらないと決めつけることは無責任で、変わるであろうことを前提の批判に意味はあるが、変わらないことが前提では、それは非難であり、多くの場合、愚痴にしかならない。また、そもそも宗教右派勢力の最大の関心は、倫理上の問題であり、あるキャッチーな表現を借りれば、3 つの G と言われるゲイ、人工中絶を含むジェンダー問題、銃規制(Gay, Gender, Gun control)である。彼らの主たる関心は国内の倫理問題であり、ブッシュ政権 2 期目の外交政策が変わらないとする議論は留保しなければならない。


二大政党

 今回の上下両院の選挙でも共和党が勝利し、立法府、行政府とも共和党が制した。連邦議会レベルでは、今後 8 年から 10 年ほどは、民主党が上院もしくは下院で多数派をとることは、かなり厳しい状況にある。選挙区の区割りの関係で共和党の支持基盤が強まっており、議会で民主党が復権することは、5 年から 10 年の長いスパンで考えないといけない。
 また、最高裁の判事がやめることが考えられ、ブッシュ大統領が共和党右派の人物を指名する可能性が高く、最高裁でも共和党右派色が強まる勢いである。これにより、立法、行政、司法の 3 権とも共和党が制する状況になり、民主主義にとって危険だという指摘があるが、危険かどうかはわからない。というのも、これは民主主義が選んだ結果だからである。
 近年、これまでは行政と立法で違う政党がおさえる、いわゆる「分割政府」(Divided Government)がとられていた。政治学者や批評家らは、米国で分割政府が続いていた頃には、政策決定にこの制度は非効率でよくないと言い、逆の状況になると危険だと意見を変える。
これは、政治学者などが常に現状を批判する傾向が反映されているように思える。


ブッシュ第 2 期目

 パウエル国務長官の事実上の更迭で強硬路線が懸念されているが、パウエル国務長官は、国際協調路線でありながら、過去 30 年で海外渡航歴が最も少ない。また戦争等の重要議題で大統領と意見が異なっても辞任しなかった。これは、パウエル長官が国際協調路線を必死に守りぬこうとしたからかもしれないが、実際は大統領よりも高い支持率に支えられていたからであろう。
 アジア関連の人事では、次期国務次官補に、ヒル駐韓国大使を起用し、北東アジアの問題で、朝鮮半島が緊急の課題であることを示している。さらに日本との関連でいえば、アーミテージ国務副長官が辞任するとされるが、彼が例外的だったのであり、今後は普通の状態に戻ると考えた方がよい。もっともアーミテージ氏の影響がなくなるかといえば、そうではなく、様々な形で対日政策を補完する役目を担っていくであろう。NSC では、マイケル・グリーンアジア担当上級部長が残留することになっており、このことは好ましいことである。


イラクを巡る情勢とトランスフォーメーション

 ネオコンと呼ばれる人たちの政策が失敗し、イラク戦争への派兵は依然として続けられる中、現路線を継続することは客観的に難しい。また、2 期目の大統領は、政策が変わらなかった人を探す方が難しいと言われるほど、歴史的な評価を高める努力を行う。
 ラムズフェルド国防長官は、第 2 期目の早い段階で年齢上の理由等を挙げて退くであろう。
これまでの国防長官を見てみても、ペンタゴンのような巨大機構のマネジメントは大変で、2期8年を続けた者はいない。一方、トランスフォーメーションの流れは、軍事技術や財政上のことから、基本的に変化はないであろう。しかし、今後の米軍の動向は、イラク情勢次第になると思われる。イラクの選挙は、米国が実施する以上、成功したと言い張るであろうし、現にスンニ派の 2 割程度が暫定政権を支持しているとも言われている。
 イラク戦争はベトナム戦争と似ていると言われるが、むしろ米西戦争に似ている。米西戦争では戦闘は数週間で圧勝したが、ゲリラ活動等の鎮圧に 14 年、13 万人の派兵、米国の犠牲者 4000 人、フィリピンの犠牲者 20 万人を出した。19 世紀末の米国は急速に大国化し、米国側も大国としてのふるまいを希望した。当時の米国を取り巻く国際政治の構造上の変化が、米西戦争を引き起こしたのかもしれない。


米軍再編と沖縄

 イラク情勢が米軍再編に相当程度、影響を与える。イラク情勢が苦しくなると、在沖海兵隊が空洞化したままになる可能性もある。QDR で不安定の弧といわれた地域への対処を考えると、海兵隊の一部分散論はありえるのではないか。普天間飛行場の辺野古移転については、環境アセスメントに時間がかかるだろうが、現在一番ありうるオプションである。一方、時限爆弾をかかえている状態であり、それが難しいということであれば、嘉手納飛行場への統合案の現実的なメリット・デメリット、または県外移設についてのオプションなど多くのオプションについて、民間の有識者らが柔軟に検討し、知的準備しておくことが重要である。
 沖縄問題を考える際、これまでは日・米・沖で考えていたが、むしろ沖縄県内で1枚岩でないところに問題があるのではないか。自治体外交にある種の自省が求められる。
  地位協定で沖縄の最大関心事である被疑者の起訴前の身柄引渡しや米軍の立会人については、運用で対応しており、国際的にも妥協している。逆にイラクに派遣されている自衛隊は、特権的地位を保っている。そのため身柄引渡しの問題については、政府としては主要な争点ではなく、むしろ横田基地の軍民共用の際の交通管制の問題の方が関心は高い。


日米同盟の将来

 日本は、政府、民間、財界、ジャーナリストとも米国の政権政党以外を忘れる傾向にある。
米国の共和党・民主党エリートでコンスタントに日米問題や沖縄問題に関心を寄せている人は皆無に近い。よって、彼等をいかに教育し、関心をもたせるかが鍵となる。例えばケリーが負けた今こそ、民主党の有力者との人脈を構築、維持、拡大する必要がある。
 日米同盟の将来は、日本の限界を知った上で検討すべきである。限界を知ることにより能力は伸ばすことができる。日本という国は、37 万平方キロメートルの土地に、1 億人あまりが住み、高い経済力を保つが、カロリー自給率 20%という制約をまず認識すべきである。
 その上で、米国だけに変わることを求めるのではなく、我々もどう変わるべきかを考えることが重要である。主体性を持つべきものが持たず、相手だけに求めるのではなく、こちら側も常に対米交渉でどう変わるべきかをあわせて検討する必要がある。


5.9. 公開シンポジウム『米軍再編と沖縄』
星野俊也(大阪大学大学院教授)
川上高司(北陸大学教授)
吉元政矩(元沖縄県副知事)
上杉勇司(沖縄平和協力センター主任研究員)

米軍再編と日本の対応

 今回の米軍再編は、クリントン政権下での沖縄県内でほぼ完結する SACO とは違い、共和党政権であるブッシュ政権のグローバルな米軍の再編であり、米軍の今後を決定づける中長期的な大きな流れである。
 2004年9月の小泉・ブッシュ会談で、効率的な抑止と沖縄の負担軽減という方向性の合意がなされた。その時点から日米間ではっきりと米軍再編と沖縄問題とのつながりの認識がされた。
 米軍再編の最大のポイントは、米陸軍第 1 軍団司令部が日本に来ることである。場所については未定だが、1、3、5、7(米陸軍第1軍団、米海兵隊第 3 海兵遠征軍、米空軍第 5 空群、米海軍第 7艦隊)の陸・海・空・海兵隊の司令部機能がすべて日本に集まり、日本のハブ基地化が進むことが予想される。
 沖縄の負担軽減の具体案が話し合われるのは、今年 2 月 19 日に開催される 2+2 が開かれてからになるであろう。よって、今の時期に沖縄の声を一本化して日米両政府に伝えていくことが大変重要である。


SACO プロセスの評価

 今回の米軍再編と SACO の路線とは完全に重なっている。だからこそ、再び普天間飛行場をどうするかという議論が出ている。SACO では県内移設による基地の縮小を、今度は日本全体で負担しようという流れであるので、正しい手順としては、SACO を含めもう一度整理し直すべきであろう。
 沖縄の米軍基地負担軽減の最大の焦点は海兵隊である。在沖米軍基地の兵力割合や米軍犯罪などの大部分を海兵隊が占めるため、沖縄県は海兵隊の大幅削減を要求すべきである。その中で緊急課題としての普天間飛行場の問題があるという認識が沖縄県民の合意を得られやすいだろう。
 だが今回の動きは、県外・海外分散案が出てきて曖昧模糊としている一方、沖縄の米軍基地の負担が軽くなる分を自衛隊が埋め合わせ、沖縄に日米両軍事基地が広範囲に整備されることが予測される。
 今回の米軍再編は、5 年間、10 年間の短いスパンで議論するテーマではなく、2020 年頃の中国への対応など、もう少し長いスパンで沖縄を取り巻く環境を見るべきである。沖縄の北に 1 億 3000 万の人口を持ち、世界第 2 位の経済大国日本があり、沖縄の西 700 キロに、13億の人口を抱え、年8%~10%の経済成長を続ける中国がある。EU とそっくりのものがアジアにできるとは思えないが、20 年後には、東アジア共同体の話も出ている。今必要とされているのは、米軍再編をチャンスとして捉えなおし、議論し直すことである。


日本の対応と沖縄の戦略

 「トランスフォーメーション」とは、「抜本的変化」という意味である。今後の大きな変化を想定して、本土・沖縄双方とも心の準備をしておく必要がある。
 変化の中で具体的に決まっていない部分が多いため、変化の中に可能な限り沖縄の意見・要望を反映させたい。そのために、「分散のススメ」という理論武装が考えられる。
 これまで「沖縄の戦略的な重要性」や「抑止力を維持」のためには、基地を沖縄に集中させなければならないと言われてきた。しかし、過去 10 年間の変化を捉えて、新しく米軍再編と沖縄の問題を考える際に、分散化が最も合理的、かつ戦略的な日本の重要性を維持し、抑止力を維持する重要なオプションになりえるだろう。
 中国や北朝鮮のような固定型の脅威には一定の固定型の安全保障のメカニズムを整備しておく必要がある。一方、新しいテロなどの脅威はモバイルであるため、こちらもモバイルで対応しなければならない。基地があるからこそ安全であったと思われていたのが、沖縄が経験したように、基地があるからこその危険が生まれるケースがある。集中しているところがターゲットとして狙われ、何かあれば壊滅ということになる。むしろ分散している方が、脆弱性が低くなるので、米軍利益の確保、日本の安全保障双方において、「分散のススメ」をしっかりと主張できる時期である。
 米軍再編を引き金に変化が確実に訪れるであろうから、これを沖縄再編の機会にしたい。米軍基地依存経済を抜本的に考え直し、ポスト再編の跡地利用とうまく結びつけ、国際都市形成構想などのアイディアをリフレッシュさせて進めることも一案である。
 また、中国脅威論が叫ばれる中、歴史的に友好関係にある中国との関係を発展させていくことが沖縄ならではの役割であろう。


5.10. 米軍再編と日本本土の米軍基地の対応
村井友秀(防衛大学校教授)
戦略環境のとらえ方

 米軍再編の背景には、新しい脅威、国際テロリズムの問題がある。日本の場合、その脅威よりもむしろ米国のグローバルな戦略の方に注目すべきである。具体的には中国問題である。米国が超大国としての地位を維持する上で最大の懸念材料が台頭する中国であり、その中国との関係をどうするかが日本を含んだ地域における米軍再編のポイントである。また、米軍の再編の根底には、1-4-2-1 と 10-30-30 と呼ばれる考えがある。1-4-2-1 は米国本土に米軍をおき、海外の 4 箇所に展開し、2 つの戦争を戦い、1つの戦争は完全に勝利するという意味であり、10-30-30 は 10 日間で展開し、30 日間で戦争に勝利し、30 日間で撤退するという意味である。
 米軍関係者は、地域の小さな紛争は日本が独力で対処することを期待しており、米軍再編もその方向に進んでいる。米軍は自ら対応する事態を限定し、その他の事態は日本が独自に対処することを期待している。米軍の再編は、米国の国益のために行われているが、同時に米軍再編が自衛隊のあり方に影響を及ぼす可能性が大きいことも認識すべきである。
 日本の国益を明確に認識し、国益に優先順位をつけ、優先順位の高い日本の国益に沿うように米国を動かす政策を日本は考えるべきである。


中国の対日政策

 中国の日本に対する政策を振り返ると、90 年代までは江沢民が来日した際の発言にあったように、日本を叩くこと(バッシング)が中国の利益に適っていた。ところが現在では、日本を無視する(パッシング)傾向が見られるようになっている。かつては最大の貿易相手国であった日本も、現在は中国にとって3番目の貿易相手国である。中国は対日依存を減らし、日本の影響力を低下させる政策を着実に進めてきた。日本の ODA の影響力は急速に低下している。100年ぶりに中国は日本に対して優位な立場に立ちつつある。
 対中政策を考えるとき、「消極的挑発」というコンセプトは重要である。すなわち、日本が軍備を縮小すれば、中国が日本に対して軍事的手段をとった場合の中国のコストが小さくなり、中国に対して、軍事的手段をとった方が有利であると挑発していることになる。この考え方が、「消極的挑発」である。日本では一般的に、中国が日本に対して軍事的手段をとらないように説得するためには、日本が軍縮して平和的態度を示すべきであるという考え方があるが、愛国主義(民族主義)によって国民を団結させ、「富国強兵」を国家目標にしている中国共産党の基本的性格を理解していない考え方である。日本が1歩退けば、中国は1歩前へ出る。中国の国家目標は「振興中華」である。


米軍の戦略

 東アジアにおける米軍再編のターゲットは中国である。米陸軍第 1 軍団司令部の日本への移転計画の背景には、中国ないしは朝鮮半島への備えといった考え方がその中心にある。
 米軍関係者による在日米軍基地の重要度評価を見ると、どの基地が返還できるかがわかる。最重要基地は、空母の母港である横須賀、朝鮮半島に近い佐世保、F-15 戦闘機航空団を運用する嘉手納である。
 沖縄の基地について米軍が強調する点は、沖縄から1000キロ圏に紛争地域があるという沖縄の地理的位置である。在沖米軍を北海道の矢臼別や静岡県の富士に移転させるという話があるが、日本であればどこでも同じとは言えない。海兵隊を沖縄外に移すと、海兵隊を使い難くなるということを念頭に議論しなければならない。


日本本土の米軍基地の対応

 神奈川県横須賀市には米国にとって最も重要な基地の一つである大規模な米軍基地がある。神奈川県の基地は、沖縄と比べるといろいろな意味で事情が異なっている。したがって、同じ方法で問題を解決することはできない。
 神奈川県は、米軍施設数が都道府県別で第 3 位、基地で働いている従業員数は 9000 人で沖縄よりも多い。したがって、基地の問題を自分の問題として考えている人は日本一多いと言ってもよいだろう。神奈川県の座間市や相模原市は、沖縄並みに市の中で米軍基地が占める割合が多い。また、空母艦載機による厚木基地の騒音問題は深刻である。神奈川全体では、米軍基地面積は1%に満たないが、特定の市にとっては深刻な問題になっている。
神奈川県がこれまで基地問題にどのように対応したかというと、「基地の整理と強化」がキーワードであった。沢山あった基地を横田や横須賀などに集約・整理し、基地の機能を強化した。基地の整理が米軍の利益になり、多くの施設が返還可能になった。
 また、米軍基地を見ると、沖縄の場合は国有地の割合が低い。本土は国有地がほとんどで、横須賀の基地も、現在は米軍基地だが、それ以前は、帝国海軍の基地であった。したがって、地元の人にとって米軍基地のイメージは、単なる一つの軍事基地である。使っているのは、昔は日本軍、今は米軍という違いがあるだけで、基地への違和感、嫌悪感、敵意が沖縄とはかなり違う。土地をとられた感覚があまりなく、返還運動に対する温度差がある。
 沖縄では、米軍基地があることを民族的屈辱と表現することがある。本土の場合は、そのような意識は薄い。横須賀基地では、1960 年代、米軍兵士が横須賀の町で飲んで暴れることに対して民族的屈辱を感じる横須賀の人はいたと思うが、今はほとんどいない。横須賀の人が米兵を見る目は、日本の高度成長とともに変わった。特に 80 年代から日本の高度成長が進み、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われ、日本人が傲慢かつ自己を過大評価していた時期に、横須賀の人は米兵を可愛そうな貧乏人と見るようになった。横須賀の人は、飲食店に入る金が無く公園で缶ビールを飲んでいた米兵に哀れみを感じ、金を払わないという理由から横須賀市の飲食街では「米兵お断り」という張り紙さえあった。米兵は人種差別と民族的屈辱を感じ、一方、日本人は米軍人に対する屈辱感や劣等感の裏返しの敵意を持たなくなった。岩国、佐世保も横須賀と同じ感覚だろう。本土と沖縄の基地問題とでは、かなり温度差がある。
 そういう意味でも、直接的に本土の返還運動と沖縄の返還運動をリンクさせるのは難しい。
ただ、基地の返還運動を主張する際に重要なことは、主張の合理性である。自分たちの主張は、日本の利益にもなり、米国の利益にもなるという点を米国側に納得させる必要がある。
神奈川県の例にもあるように、基地の整理が米軍の利益になるという点を見出すことである。
神奈川県で成功したポイントは、沖縄の場合にもある程度利用でき、よい効果を及ぼすと思われる。
 感情論で話すと米国は議論に耳を傾けない。世界中から軍隊がなくなれば世界は平和になるという感情論に米国は反応しない。「基地の無い、軍隊の無い、平和な島沖縄」というスローガンだけでは米国を説得することは出来ない。日本を取り巻く国際環境を冷静に分析し、合理的な主張を展開する必要がある。日本の主張が合理的で、米国の利益になると考えれば、米国は動く。この点が米国と交渉する場合、最も重要なポイントである。本土の基地の返還運動の教訓で参考になるのはこの点だろう。


5.11. 在沖海兵隊の戦略的重要性と今後
高橋杉雄(防衛庁防衛研究所教官)
北東アジアにおける米国の前方展開兵力の今後

 ブッシュ政権の発足以来、米国は国防政策の抜本的な見直しを進めている。その核にあるのは、予測可能な脅威に備える「脅威ベースアプローチ」から、予測不可能な事態に備える「能力ベースアプローチ」への転換である。脅威ベースアプローチとは、予め脅威を特定し、対処するための能力を整え、予め兵力を展開して紛争に備えることである。ソ連を脅威として想定してきた冷戦期においては有効に機能してきたこの脅威ベースアプローチだが、現在の世界では機能しない。もはや脅威がどこで顕在化するか予測できないからである。
 こうした現実をふまえて、現在の米国は、能力ベースアプローチを基本的な戦略としている。能力ベースアプローチとは、個別の脅威を特定するのではなく、何者かは分からないが米国に対する挑戦者が持ちうると理論的に想定される「能力」に対して備えるものである。ここでは、紛争はいつどこで起こるか予測不可能という前提に立つため、緊急対応能力が重視されることになる。このための様々な改革を進めているのがトランスフォーメーションである。今回はその中でも、日本周辺と北東アジア地域での米軍の今後について、沖縄海兵隊の将来にも言及しながら検討してみる。その際、米国の軍事戦略の中での海兵隊の扱いに変化があるのかなどに注目する。
 まずグローバルな背景を見てみると、3つのトレンドが見いだされる。第1は、前述した能力ベースアプローチへの転換、すなわち、冷戦型の「封じ込め」態勢から、予期せざる場所で起こる紛争に迅速に対処する態勢への移行である。つまり、前線基地に大兵力を貼り付けて仮想敵国を抑止するのではなく、地域ごとに整備されたハブ基地に即応戦力を配備し、有事の際にはそれらが緊急展開して対処する態勢へと移行しようとしている。第 2 は情報RMA の進展である。情報 RMA とは、簡単にいってしまえばハイテク化、情報化、ネットワーク化などによって軍隊の戦闘力を飛躍的に高めるための軍備の近代化である。これが進んだため、これまでよりも小規模な部隊でも同等の戦闘力を発揮できるようになっていると考えられており、海外展開米軍の兵力を減らしても抑止力は維持できると考えられるようになった のである。さらに、それに拍車をかけたのがイラク問題である。イラク戦争がいったんの終結を見て1年以上経つ現在においても、未だ国内秩序の再建はならず、米軍は10万を超える兵力を駐留させることを余儀なくされている。欧州およびアジアへの駐留体制を維持したままこれだけの兵力を中東に展開させるのは、軍にとって非常に負担が大きい。そのため、海外展開兵力総数の削減が早急に必要となっているのだ。
 以上は全体の流れになるが、地域別にこの対応も多少異なる。ソ連が消滅し、脅威がなくなった欧州では、その軍事力は域外における緊急展開を目的としたものに改められようとしている。一方で、中東だが、まずイラクの秩序回復を行わなければならないし、新生イラクが誕生しても、しばらくは対外防衛のために米軍はイラクに駐留しなければならないだろう。
 北東アジアでは中国の台頭があり、朝鮮半島や台湾海峡という冷戦型の脅威が残存している。また、地域の同盟国も緊急展開能力をほとんど持たず、領域防衛を中心とした防衛態勢を取っている。そうなると、兵力を削減しつつ、抑止力と緊急事態対処能力の維持を同時に目指さなければならない。そのためには、常駐兵力を削減しながら、航空打撃力を重視し、緊急展開や戦略輸送の効率化を図り、指揮を統合するといったことが必要となってくる。


北東アジア米軍の今後

 北東アジアでの米軍根拠地の可能性として、日本・韓国・グアムの 3 箇所を挙げ、まとめたものが表(1)、(2)である。表(1)では二重丸ほど米軍を駐留させておく必要が高く、表(2)ではその変化に対して正負でことを表している。


(1)日本・韓国・グアムの特徴
韓国 日本 グアム
政治的必要性
防衛上の必要性
地域安定上の必要性
攻撃からの安全性
インフラ
財政的支援 ◎ → ◯

(2)北東アジア米軍に想定される「変化」
韓国 日本 グアム
兵力削減 0
空軍力重視
緊急展開・戦略輸送
統合指揮能力 0 0
BMを想定した配備
同盟の強化・広域化 N/A

 こうしてみると、韓国、日本、グアムとそれぞれ異なる特徴があることがわかる。諸事情を総合して考えると、日本とグアムの 2 つを大きなハブとして緊急展開の中枢を担うことになるだろう。ただ、根本的に新たな局面が生まれているわけではない。在日米軍はもともと域内の安定を主要な役割としていたわけだから、位置づけが強化されても役割には質的変化はないといえる。域内での、相手を黙らせる精神的な力としての抑止力と、予想できない緊急事態が起こったときに展開できる能力が変わらず求められているのである。
 もともと機動力の高い空軍や高速化に限りのある海軍は、前方戦略態勢に大きな変化は無い。しかし、現在では、強すぎ、重すぎ、大きすぎるようになった陸軍は、大規模な見直しを迫られている。そのひとつの答えがストライカー旅団である。緊急展開能力を向上させたものだが、そのコンセプトは軽い戦闘車両を中心に、世界中のどこへでも 96 時間以内で展開することである。しかし、これが海兵隊の代わりとなるかというと問題がある。ストライカー旅団は移動に飛行機が必要なため、飛行場の確保の困難なアジア太平洋地域では機動性に疑問が残る。逆の指摘としては、海兵隊は海岸から 1,000km 以上の内陸地には行けないが、海があればどこへでも行ける。この両者の特徴を比較すると、この地域には依然として海兵隊の必要性が認識される。アジア太平洋地域で初動体制を担うという海兵隊に与えられた 役割には大きな変化はない。海兵隊は現在、「シー・ベーシング」という概念をキーワードとして、海上そのものを基地として世界中に緊急展開しようとしている。ただこれはこれまでの方向性を継続しようとするものである。そのため、米陸軍ほど大規模な組織改革を進めようとしているわけではない。


在日米軍の今後

 それでは在日米軍の今後はどうなるのかということであるが、まず航空基地の重要性が高まるであろう。そして指揮機能の強化が図られる。その上で日本とグアムがこの地域を支えていくことになるのであろう。
 海兵隊の役割としては、引き続き北東アジアに駐留している必要性はあるが、配置についてはいくつかの可能性がある。グアムとの役割分担の可能性もあるが、例えばグアムは沖縄本島の約半分の面積しかないことを理解しておかなくてはならない。また、「負担」といったときに、はっきりさせておかなければならないことは、「負担」とは米軍が駐留する「土地」であるのか、それとも犯罪・事故・騒音をもたらす「兵力」であるのか、という点だ。そこがはっきりしないと「負担軽減」といった時に沖縄の求めるような「軽減」にならない可能性がある。


5.12. 新聞への掲載記事

琉球新報 2004 年 11 月 5 日 朝刊 2 面


沖縄タイムス 2005 年 1 月 14 日 朝刊 2 面


沖縄タイムス 2005 年 1 月 15 日 朝刊 2 面


沖縄タイムス 2005 年 1 月 16 日 朝刊 1 面


沖縄タイムス 2005 年 1 月 16 日 朝刊 2 面


沖縄タイムス 2005 年 1 月 16 日 朝刊 3 面


琉球新報 2005 年 1 月 16 日 朝刊 2 面