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平成21年度 報告書

在沖米軍再編のターニングポイント 〜政権交代後の日米同盟の行方〜


平成 22年 2月
特定非営利活動法人 沖縄平和協力センター


はじめに

 2009 年、日米両国はそれぞれ政権交代を果たした。1 月には米国でバラク・フセイン・オバマ氏(民主党)が大統領に就任。そして、日本では 8 月の衆院選で民主党が圧勝し、9月に鳩山由紀夫氏(民主党)が首相に就任し、民主、社民、国民新の三党連立で鳩山内閣が発足した。オバマ政権がブッシュ前政権下での政策を引き継ぎ、日米合意の確実な履行を求める一方、日本では日米間で合意された計画そのものの見直しを主張する民主党が第一党となった。日米双方が政治転換期を迎え、前政権下での在沖米軍再編に関する日米間合意の履行が危ぶまれている。
 沖縄平和協力センター(OPAC)は、沖縄の米軍基地問題を国際安全保障の文脈の中で分析する沖縄県唯一のシンクタンクである。当センターはこれまで、世界情勢や日米安保体制といった大局的な枠組みの中で、沖縄の願いをいかに実現させていくかに焦点を当てた研究を続けてきた。その成果として、平成 17 年には『米軍再編と沖縄のグランドストラテジー〜海兵隊の分散化と沖縄変革のススメ〜』を発表し、「海兵隊の分散化」をキーワードに沖縄の負担軽減に向けた現実的な選択肢を提示した。また、その後 2 年間の日米間での米軍再編協議の過程と合意が沖縄に及ぼす影響について考察した成果を、平成 19年に『米軍再編のネクストステージ〜負担軽減を実現するために〜』と題した報告書で発表している。
 本報告書は、当センター副理事長の上杉勇司(広島大学大学院准教授)と同研究員の大浜勤子が、在沖米軍再編問題、特に普天間飛行場の代替施設移設問題を中心に、2009 年という政治転換期を考察したものである。その過程で、川上高司拓殖大学教授、渡部恒雄東京財団上席研究員、星野俊也大阪大学大学院教授、村田晃嗣同志社大学教授、といった方々との研究会を通して様々な角度から貴重なご意見を賜った。
 在日米軍が持つ抑止力を維持しつつ米軍基地が集中する沖縄の負担を軽減するという在沖米軍再編計画が今後どうなるのか。沖縄にとって予断を許さない現状にあって、本報告書が一考を投じることができれば幸いである。


問題提起

 日米両国で政権交代を果たした 2009 年。日米それぞれの新政権間での同盟外交は、普天間飛行場の移設問題を入り口としてスタートした。2009 年の普天間飛行場移設問題は、2 月の日米間でのグアム協定締結に始まり、9 月に発足した鳩山連立政権の迷走と日米間交渉の膠着で幕を閉じた。2010 年、日米同盟は、安全保障条約改定から 50 年という節目を迎える。両政府は日米同盟の重要性を認識し同盟関係の深化を図ると繰り返すが、同盟の向かうべき方向は定まっていない。沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告から14 年、普天間飛行場の危険性はそのままだ。代替施設を辺野古沿岸に建設するという日米間の合意は、政権交代によって建設地の見直しがなされ、その履行が危ぶまれている。
 代替施設建設を条件とした在沖海兵隊約 8000 人とその家族をグアムに移転するという沖縄の負担軽減の目玉であった計画にも影響が出ることは必至だ。2014 年という在沖海兵隊の移転期限だけが迫っている。在沖米軍再編は、一括パッケージとして合意されており、普天間飛行場の移設が進まなければ、嘉手納以南の米軍用地返還も進まないことになる。
 やっとたどり着いたはずの沖縄の負担軽減措置。しかし、またしても、沖縄は辛酸をなめることになるのだろうか。あるいは、理想論ではなく現実的な実利として沖縄が容認した普天間飛行場の代替施設の辺野古沿岸への移設計画を越えるものを手にすることが出来るのだろうか。
 在沖米軍の再編には様々な要素が複雑に絡み合っている。日米それぞれの政治事情や思惑、日米同盟を取り巻くアジア太平洋地域における戦略情勢、また、沖縄の思いや事情といった主要な要素を整理してみることで、在沖米軍再編計画における課題が浮かび上がるのではないかと考える。


日米政権交代:政治転換

(1)概観

 2009 年は、日米両国ともに政治転換期であった。米国では、金融危機という逆境の中で、国民の期待を一身に受けたオバマ大統領が誕生し、民主党政権が発足した。イラク戦争やアフガニスタンでの戦闘などテロとの闘いが泥沼化し体力が消耗した米国の立て直しに期待が集まった。
 日本では、8月の衆院議員選挙で民主党が圧勝し、9月には民主、社民、国民新との連立となる鳩山政権が発足。外交面で自民党体制からの大きな転換が予測された。鳩山首相は、就任直後に国連総会への出席のため訪米。日米首脳会談より先に、日中首脳会談が開催された。首脳会談では、中国の胡錦濤国家主席と二国間関係の改善・強化で合意し、鳩山政権のアジア重視姿勢を反映したものとなった。オバマ大統領との日米首脳会談では、日本の外交基軸は日米同盟にあることを伝え、一層の関係拡充を図ることを合意した。新政権下での当面の焦点となると見られた普天間飛行場の移設問題については言及されなかった。日米同盟を基軸としていた日本の外交政策が大きく変わるのではないかという懸念あるいは期待の中、鳩山首相が国連という舞台で外交デビューを果たしたことは象徴的であった。


(2)米国:オバマ政権

<オバマ政権の基本方針>
 オバマ政権は、世界を巻き込んだ金融危機の中で発足した。軍事的側面に偏重したハード・パワーに頼るブッシュ前政権の方針から脱却し、ソフト・パワーとハード・パワーを併せてバランス良く有効利用するというスマート・パワーの行使が最善の策として外交・国防方針の基盤に据えた。外交における対話の重要性を訴え、核兵器撤廃を理念として打ち出し、米国だけでなく世界が目指すべきビジョンを示した。ブッシュ前政権時の強い一国主義から多国間協調主義への米国の外交方針の転換を世界に向けて発した。


<テロとの闘い>

 一方、オバマ政権下でも米国の外交政策の焦点は依然としてテロとの闘いだ。オバマ政権は、泥沼化していたテロとの闘いを終結するため、米軍活動の重点を変える方針を打ち出した。主戦場はイラクではなくアルカイーダの温床と見られるアフガニスタンになった。政権発足直後の 2 月には、2011 年末までに米軍をイラクから完全撤退させることを決定。3 月には民生支援を含めたアフガニスタンでの新戦略を発表し、増派の開始を発表した。しかし、就任から 1 年が経過した今、当初の理想と現実はかけ離れたものとなっている。イラクからの撤退は進んでいるが、イラク国内での政治的混乱は続いている。アフガニスタンの戦況はパキスタンまで拡大し、米軍は疲弊し、米国内では厭戦気分が高まっている。オバマ政権は、事態の好転を狙い、2009 年 12 月初めにはアフガン新戦略を決定。新たに3 万人を増派し、アフガニスタン側へ治安権限を移譲して 2011 年 7 月からアフガン駐留米軍の撤退を開始することを目指すと発表した。この時点で、米国の戦略の焦点が、いかに戦闘に勝利するかではなく、いかにこの戦いを終結させるかに移っていることは明白となっている。米国は、アフガニスタンへの増派について同盟国や友好国の支援を求めているが状況は厳しい。国内的にもオバマ大統領の支持率は低下しており、急速に求心力を失いつつあるとの指摘もある。今年 11 月には米国で中間選挙が予定されている。それまでに事態を好転できるかどうかが今後のオバマ大統領の指導力に影響すると考えられるため、注意が必要だ。


<中国政策>

 オバマ政権の東アジア政策で世界的に最も注目を集めたのは中国との関係であろう。オバマ政権が中国をどう見るかで米国の東アジア政策の全体像が決定すると見られるからだ。2009 年 4 月、オバマ大統領と胡主席はロンドンで行われた米中首脳会談で、ブッシュ前政権時の「米中戦略経済対話(U.S.-China Strategic Economic Dialogue:SED)」を発展させた「米中戦略・経済対話(U.S.-China Strategic and Economic Dialogue:S&ED)」枠組みの設立に合意した。オバマ大統領は、米中関係を「世界中のどの二国間関係にも劣らず重要だ」と位置づけた。同年 7 月には、「米中戦略・経済対話」が開催され、戦略的な協力関係へ移行する可能性が示された。米国の思惑は、軍事バランス面での中国との対立を避け、中国を責任あるステークホルダーとして導くことにある。経済・貿易活動を通して実利的な結びつきが強くなる米中間では、お互いの利益を損なわないことを暗黙に了解したある種の信頼関係が成立していると言える。ただし、中国の軍備増強の長期的な影響を考慮し、米国側は警戒を怠らないと見られる。一方、中国も、米国の将来的な政権交代を予測し、米国に対して完全にガードを下げる可能性は低い。


<日本への方針>

 では、日米関係に対するオバマ政権の政策どうか。オバマ政権は、日米同盟をアジアにおける米外交の基盤として位置づけており、前政権からの大きな変化はない。ただ、日本で民主党政権発足の可能性が高まったことを背景に、日米間での在沖米軍再編合意内容の履行を確実なものにするため、オバマ政権発足直後には日米間でグアム協定を締結するという手段に出た。日本の民主党が普天間飛行場の県外移設を求める方針であったため、日米両政府には、これまでの長年にわたる日米間協議の「成果」としての在沖米軍再編計画を白紙に戻される危険性を排除する意図があった。米国側にとっては、計画実施が遅滞することで、世界規模での米軍再編に組み込まれたグアムの軍事基地強化と再編・統合にも支障が出ることを避けたい狙いがあった。鳩山政権が発足すると、日米同盟の議題は普天間飛行場移設問題に終始し、米国側では日本の新政権に対する不満と疑念が鬱積していると言われている。そんな中、11 月にはオバマ大統領が来日した。日米同盟が両国の安全保障と繁栄の基盤であり、米国は太平洋国家としてアジアに積極的に関与していく方針を発表し、日米同盟の安泰を支持し地域への米国のコミットメントを維持する姿勢を示した。


(3)日本の同盟外交

<日米同盟政策の背景>

 これまでの日本の外交は、日米同盟を主軸に据えていた。特に、米ソ冷戦期には日米同盟から逸脱した路線を取ることはまず考えられないことであり、日本の外交イコール日米同盟であった。冷戦が終結し、世界の軍事構造が大きく変化していく中、日本が置かれた状況は複雑なものであった。世界的には米ソの 2 極対立構造が消滅したとはいえ、東アジア地域では、核保有国である中国の台頭、それにともなう中台軍事バランスの変化、北朝鮮の核問題で緊張の高まる朝鮮半島といったように、気がつけば状況はより複雑化していた。アクターが増加し、しかも真意の見えないアクターが鍵を握っているという戦略環境になっていたのである。日米同盟は、おそらく唯一の定数としてその中に存在していた。この定数は、その後日米両国で二度にわたり再確認・再定義された。まず、1996 年の橋本首相とクリントン大統領による「日米安全保障共同宣言ー21 世紀に向けての同盟」と翌年 1997 年の「新日米防衛協力のための指針」。そして、2003 年に本格化した日米間の防衛見直し協議(Defense Policy Review Initiative: DPRI)の中間報告として発表された「日米同盟:未来のための変革と再編」(2005 年 10 月)である。その間、「同盟漂流」と呼称されるほど二国間関係が不安定になった時期もあった。その期間を経て両国が達した結論は、日米同盟は安保条約を根幹とし、基本的にその非対称性を維持したまま、変化する戦略環境に対応するということであった。その中で、世界規模の米軍再編の一貫として在日米軍の再編が計画され、日本の自衛隊の役割の拡大、米軍との協力体制の強化が図られることになった。


<政権交代の影響>

 この日米同盟という定数に一石を投じる結果となったのが、2009 年 8 月の衆院選での民主党の圧勝である。試行錯誤を重ねながらも同盟の維持・強化で歩調を合わせていた日米両国は、自公体制が崩れ、日本の外交方針の行方が分からなくなった。自民党と比較すると、民主党はそもそも国家の安全保障に関する党としてのイデオロギーを確立しているわけではなかった。民主党マニュフェストで示された中で、外交ビジョンと呼べるものはおそらく、「世界の平和と繁栄を実現する」である。政策として掲げられた「日本外交の基盤として緊密で対等な日米関係をつくるため、主体的な外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす」や「東アジア共同体の構築を目指し、アジア外交を強化する」からも、目指すべき理念は明確には見えてこない。「緊密で対等な日米関係」をつくることも「東アジア共同体の構築」も本来であれば外交手段として位置づけられるべきだが、それら自体が目的になっているようだ。日米同盟は日本外交が目指す世界像や地域像を実現するための手段であるべきで、決して目的そのものではないはずだ。ビジョンを示して外交道具としての日米同盟の在り方を考える必要がある。
 一方、鳩山新政権は、米国を中心としたテロとの闘いへの日本の支援の在り方を再考し、8 年にわたって継続されたインド洋での海上自衛隊による給油活動を止めることを決定した。そして昨年 11 月には、アフガニスタンに対して、今後 5 年間で約 50 億ドル(約4500 億円)の民生支援へと方向転換することを発表。普天間移設問題に起因した日米関係のひずみが顕著な時期での方針発表であり、交渉カードとして有効利用できないまま同盟外交の成功とは言いがたいタイミングであった。さらに、アフガニスタンでの戦況は悪化しており、民間人を現地に派遣することは現時点では現実性に乏しいという問題がある。


東アジア情勢と日米中関係

(1)東アジア情勢

<中国>

 2009 年前半は、海洋での米中軍事ニアミスが多発した。まず、3 月には南シナ海公海上で調査活動中の米海軍調査船に対し中国人民解放軍海軍の艦船一隻を含む 5 隻の中国艦船が航行妨害を行うという事態が発生した。4 月には米海軍調査船が調査活動中の黄海公海上で中国漁船 2 隻に異常接近されるなど妨害行為を受けている。米海軍の両艦船共に、音響測定に関する業務を遂行中であったことが伝えられている。また、6 月には、中国潜水艦が米艦船が牽引するソナーに衝突するという事故が発生。中国は領海拡大への主張を強めると同時に通常動力型潜水艦の増強を進めており、探知に必要なデータを収集する調査活動の強化を図る米国側との間で今後このような小競り合いや事故が頻繁に起きる危険性が指摘された。両国海軍間での海洋事故の多発を受け、米中間では二国間の軍事対話の重要性が確認され、1998 年に合意されていた米中海洋安全協議協定に基づき、8 月には米中間の軍事対話が再開された。しかし、米国側は事故防止のためのメカニズムの構築という実質的な成果を期待していたが、中国側は米軍による偵察活動自体が問題の原因であるとの強硬姿勢をとり、具体的な措置を講じるまでにはいたらなかった。4 月の事件発生は、中国の排他的経済水域内であったこともあり、国際海洋法の解釈をめぐる米中間の対立も顕在化した。
 また、中国は、尖閣諸島をめぐって、日本、台湾と領有権の問題で対立している。尖閣諸島は日本が実効支配し沖縄県石垣市に属しているが、尖閣諸島周辺の海底油田の採掘権も絡み、中国側は領有権を強く主張している。今年 1 月 3 日には、尖閣諸島付近における日本の排他的経済水域内において中国の海洋調査船が海洋調査を無許可で実施し、第 11管区海上保安本部(那覇)が調査船に対し警告を発する事態となったことが報じらた。中国の海洋利権拡大を目指す姿勢が強まるにつれ、この問題をめぐる日中間の対立がさらに深刻化する可能性は否定できない。
 さらに、日中間には、中国側が強く批判してきた日本の首相らによる靖国参拝問題がある。2009 年 8 月には、当時民主党幹事長を務めていた岡田現外相が中国報道陣に対し、政権交代後は首相の靖国参拝は行わない考えであることを発表。鳩山首相を含む他の民主党幹部らも靖国参拝について同様の考えを示していた。中国側は日中関係の改善につながるとしてこれを歓迎している。
 また、中国はチベットやウイグル自治区といった内政・治安上の不安定要素を抱えている。2009 年 7 月には、ウイグル自治区で大規模な暴動が発生し、多数の死者を出した。国内における分離独立勢力を封じ込めたい中国政府に対し、少数民族への弾圧として国際的な批判が高まっている。


<北朝鮮>

 北朝鮮は 2009 年に建国 60 周年を向かえた。金正日総書記は、記念閲兵式に出席できず、健康不安が明るみに出た。健康状態は回復していると言われるのもの、すでに、三男の正雲を後継者とする体制への移行が進んでいると報じられている。外交では、核・ミサイル実験から対話路線まで硬軟両面を使い分け、特に米国からの譲歩を引き出す政策を進める。米国との二国間対話を重視する姿勢に変わりはないようだが、条件つきで6者会合への復帰を示唆する可能性も出ている。また、北朝鮮は、2009 年 12 月の米国のボズワース特別代表(北朝鮮政策担当)の訪朝と前後して、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定に転換する必要性を認識していることを明らかにするなど、軟化姿勢を示している。
 オバマ政権でも、北朝鮮との直接対話と 6 者会合の両方を通じてアプローチしていくことになる。オバマ政権は、6 者会合の枠組みの中で解決することの重要性を認識しつつ、米朝二カ国間の直接協議を機動力とする構えだ。中国が果たすべき役割にも期待し、中国の方針を尊重、重視していくだろう。北朝鮮が対話や協議に応じている限り、対テロ戦で疲弊している米国が北朝鮮への軍事的強硬手段に出るとは考えにくい。民主国家としての半島統一を急ぐより、対立の構図を緩和する形で安定を図っていくだろう。


<中台問題>

 中国と台湾の関係は安定しているだけでなく良化の方向にある。2009 年 5 月には台湾で政権交代があり、中国との関係強化へと方針が変わった。台湾では中国からの直接投資を一定の業種について解禁し、中国と台湾間の資金の流れが双方向になった。経済交流は今後も活発化する見通しだ。中国は、台湾の馬英九新政権の方針を評価しており、台湾への姿勢を軟化しつつある。中台双方は、実利的な関与を通して関係改善を図ることが互いにとって最も有益であることを認識している。


<米太平洋軍>

 米太平洋軍は 4 月には「Strategy: Partnership, Readiness, Presence」と題した新戦略を発表。友好国や同盟国との協力体制強化を重視し、地域の安全保障の課題に対して多国間での集団的アプローチの必要性を強調したものとなった。ただし、多国間の枠組みは米国のリーダーシップとコミットメントに頼るところが大きいことを認識し、アジア太平洋において当面は現在規模のプレゼンスを維持する方針を明らかにしている。


(2)日米中関係

<中国への歩み寄り>

 日米両国で生じた政治的転換は、これまでの日米同盟対中国という図式にも変化を生んだ。2009 年は、日米それぞれが中国との協調路線を示した一年であった。オバマ政権は中国に対して積極的に働きかけ、米中戦略・経済対話が開始され、両国間の軍事交流・対話の再開へとつながった。一方、日中首脳会談も開催された。鳩山首相にとっての初の首脳会談となり、中国との関係重視の姿勢を示した。また、民主党と中国共産党との間での「(日中)交流協議機構」の第 3 回会議が 11 月に開催された。その中で、小沢幹事長は民主党の外交政策について、アジア外交を重視しその中核は日中関係であると強調している。また、日中関係をアジアだけでなく世界的な意味を持つ重要な関係として位置づけ、地球規模の問題解決に向け「国際的な責務を果たすため」両国間の協力と連携の強化が必要と述べるなど、日中関係を戦略的パートナーシップに発展すべきとの考えを示した。ここで明らかになるのは、日米それぞれが単独で中国へ歩み寄っていることだ。日米同盟というひとくくりのアクターとしてではなく、それぞれが中国へアプローチすることで、中国の警戒を解き一定の成果をあげているように見える。しかしながら、日米が連携して中国へアプローチしているのではないことの弊害も潜んでいるわけで、長期的に見て、中国への関与の在り方が日米同盟に歪みを生む可能性があることも留意すべきであろう。
 ところで、日米中関係に構造的な変化が生じている背景には、まず、多国間での協力を必要とする世界規模での問題が深刻化していることがあげられる。世界経済や、地球環境問題、北朝鮮問題など、多国間での取り組み無しには解決できない問題が山積しているという現状を各国が認識している。特に、中国抜きには前進しない課題が多い。
 また、日米の中国に対する脅威認識の変化も背景の一つだ。日米両国ともに中国の軍事台頭に伴う潜在的脅威は認識しているが、その度合いが違う。しかし現時点では、日米ともに中国を戦略的パートナーとして位置づける傾向にある。オバマ政権ではテロとの闘いで手一杯で、中国との関係を落ち着かせておく必要があり、特にその傾向は顕著である。日本は、米中間の急激な関係改善の結果として日本の政治的孤立化を懸念している。民主党と鳩山政権が掲げる東アジア共同体の構築に中国の取り込みは不可欠だが、これが具体化するには米国の関与も重要であろう。


<それぞれの思惑>

 中国が軍事力を背景とした覇権拡大を目指すのであれば、日米同盟を形骸化に導くことが合理的である。日米同盟の解消では、将来的な日本の軍事成長を促すことにつながる可能性があるためだ。日米同盟が日本の包括的な軍事力の拡充を抑制していることを中国はよく理解していると考えてよい。よって、日米双方との関係改善を図り、日米同盟から対中国という図式をなくしつつ、日米同盟の形骸化を促進させることは中国の戦略目標にかなう。また、経済成長を続けることが覇権拡大にとって不可欠であるため、足枷となるような国際的責務を負わされることは当面は避けたいという事情がある。
 米国は、中国の台頭をある程度は容認するだろう。テロとの闘いで軍事的余裕はなく、中国との関係を安定させておく必要がある。戦略的には西太平洋への重点シフトを継続し、中国の軍事力拡大を牽制しつつ東南アジアへテロが飛び火することを抑止する。米国が対中戦略を本格的に始動するのはテロとの闘いが終結してからである。オバマ大統領は2011 年を期限としてイラクとアフガニスタンからの撤退を打ち出しており、これが実現するまでは、米国は中国との対立を避けるだろう。また、米中戦略・経済対話など G2体制と呼ばれる米中関係の在り方について日本や欧州などでは不評であることも認識している。中国のステークホルダーとしての役割を期待していることを明白にし、中国に大国としての世界的責任を課し制約をつけることで、同盟国の懸念を払拭したいと考える。
 一方、日本が置かれる立場は複雑である。日米同盟の維持強化と東アジア共同体の構築という二つをどのように両立させるのか。米国が日本の防衛責任を共有し、かつ世界の大国としての責任を果たしアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠な存在である限りは、日本にとって日米同盟を維持することが最善である。東アジア共同体の実現性や有効性はまだ未知数であり、軍事成長を続ける中国の意図も分からないまま、日米同盟を軽視するのは合理的ではない。日本の民主党は、日米中の三ヵ国関係が改善し対等なレベルでの関係構築を目指したいところだが、核兵器を保有し互いへの報復能力を持つ米中との三ヵ国関係において日本が対等な立場を構築するのはまだ難しい。特に、経済面での回復を果たせない日本の現状では、戦略的パートナーとしての価値が下がっており、対等な三ヵ国関係を具体的に目指していくのは時期尚早だと言える。


在沖米軍再編

(1)普天間問題:2009 年の経緯と沖縄の期待

<グアム協定>

 オバマ大統領が誕生した 2009 年、沖縄でも基地問題解決への期待が高まった。ブッシュ前政権下で拡大したテロとの闘いが終結あるいは縮小され、米軍の世界規模での展開に変化が生じ在沖米軍に関しても沖縄の負担軽減を促進する形で整理縮小が進むのではないかと期待されたのである。結果は、「グアム協定」だった。正式には「第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」で、略称「在沖海兵隊のグアム移転に係る協定」、そして通称「グアム協定」である。
 名称の通り、「再編実施のための日米のロードマップ」で定めた 2014 年までの在沖海兵隊一部のグアム移転を実施するための協定である。グアム協定によって、普天間飛行場の辺野古沿岸部への代替施設建設、在沖海兵隊約 8000 人とその家族のグアムへの移転、そして嘉手納以南の土地の返還の 3 つが全体的なパッケージとして相互に結びついていることが「協定」として格上げされた形で再確認されたのである。沖縄は、在沖米軍再編はあくまでも条件付きであることをあらためて認識させられた。協定締結の意義について外務省のホームページでは次のように説明されている。「本協定の締結により、多年度にわたる資金拠出を始めとする日米双方の行動が法的に確保され、ロードマップにおいて日米両政府が約束する在沖海兵隊のグアム移転の実施が確実なものとなる。このことにより、ひいては沖縄県の負担の軽減につながることとなる。」これを読む限り、沖縄の負担軽減という目的が付随的なものに格下げされているような印象である。
 オバマ新政権がブッシュ前政権の方針を踏襲したことはグアム協定で明白になった。さらに、当時政権交代を果たすと見られた民主党が普天間飛行場代替施設の辺野古沿岸部への建設を中心に在沖米軍再編計画を見直すことを主張していたことから、米政府はこのグアム協定を盾に国家間の約束を遵守すべきとして日本の新政権に「正当な」圧力をかける根拠を得たことになった。


<政権交代と沖縄県民の期待の高まり>

 普天間飛行場移設問題は再燃した。きっかけは日本で新政権が発足したこと。沖縄から、自民・公民の国会議員は消えた。 最低でも県外移設を主張していた民主党の圧勝で、県民の期待は高まった。辺野古の海岸を埋め立てて新たに基地を建設することで普天間飛行場の返還を果たすという日米間合意の現行案が覆され、沖縄の負担が真の意味で軽減されるかもしれないという期待である。民主党は 2005 年「沖縄ビジョン」で、普天間飛行場の県外あるいは国外移設を訴えていた。2009 年の衆院選マニュフェストでは、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」との言及に留まり、トーンダウンは否めなかったが、衆院選挙中の民主党幹部の発言等から、普天間飛行場の県外移設は党方針として保持されていることは明らかだった。辺野古沿岸への代替施設建設は、そもそも沖縄としては不本意なものであった。沖縄が同案を容認したのは、住宅密集地に存在する普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するという目標を達成するために、これが最短・最善・唯一策であると両政府から提示されたからだ。普天間の危険性を除去するために実利的な選択をし沖縄が誇る海を埋め立てて沖縄が初めて容認する形で新基地を建設するのか、普天間の危険性をそのままにしておいても戦後ずっと沖縄が持ち続けた理念を貫くのか。苦渋の選択といわれた二者択一の図式に沖縄県民が実は納得していなかったことが 8 月の衆院選で示されたのである。


<鳩山政権迷走>

 しかし、鳩山連立政権の発足後には、普天間問題について政府内での見解が一致していないことが露呈。鳩山首相は、県外移設を模索し続ける姿勢を維持しているようだが、北沢防衛相は現行案での決着しか道はないのではないかとの認識を示し、また、岡田外相は辺野古以外での県内移設も念頭に置いていた。嘉手納飛行場への統合案、宮古島市の下地島空港や伊江島補助飛行場への移設案もささやかれている。米国側は、海兵隊の運用上の問題を掲げ、聞く耳持たない構えだ。また、日本の国内政治的にも、県外移設の実現性がかなり低いことを米国側はこれまでの対日交渉を通してよく理解していると考えられる。一方、県外移設についても、政権内外から、硫黄島、佐賀空港、関西国際空港など、様々な場所が検討対象として浮かんでいるようである。
 米政府は、鳩山政権の発足前から、現行案を唯一の選択肢としてゲーツ国防長官や政府高官らの発言を通して新政権を牽制してきた。率直な意見交換で米国側の理解を求める方針の鳩山政権に応える形で、米国側は一旦態度を軟化させ日米間の協議の場を設定することに合意。2009 年 11 月のオバマ大統領来日では、普天間飛行場移設問題の検証機関として日米間で外務・防衛当局の関係閣僚級の作業部会を設置することが決定した。しかし、鳩山首相が辺野古以外の移設先を検討し結論の先送りを示したことに米国側が反発し、発足から 1 ヶ月で作業部会での協議は停止した。12 月半ばには、日本政府は現行案を見直し移設先選定の結論を 2010 年以降に先送りする方針を正式決定した。しかし、2010 年度予算には移設関連経費を計上し、辺野古沿岸部の環境アセスメントも継続することとなった。これにより、現行案が選択肢から削除されたわけではないことが、沖縄と米国双方に対するメッセージとして発せられた。


<在沖海兵隊の価値と抑止論>

 ここへきて、在沖海兵隊が沖縄に維持される必要性についても疑問が生じた。これまで、抑止力の維持と沖縄の負担軽減という二本柱で進められてきた在沖米軍再編。在沖米軍人のおよそ 58%を海兵隊が占める。米軍施設数や施設面積でも米陸海空軍と比較して海兵隊が占める割合は圧倒的に高い。沖縄の負担軽減を目に見える形でしかも象徴的に実現する必要性を考えれば、在沖米軍再編の対象が海兵隊に集中したのは当然のことであった。抑止力の維持と負担軽減。もし在沖海兵隊が沖縄に駐留せずとも抑止力を維持できるということになれば、その柱の一つが崩れる。抑止力維持とのバランスを取る必要はなく、沖縄の負担軽減に集中することが可能となる。
 そもそも、在沖米軍の役割は中国・台湾と北朝鮮を念頭に置いたものであると言われてきた。しかし、中台危機でまず米国がまず頼るのは米空母群。朝鮮半島有事で在日米軍が利用するのはおそらく空軍の爆撃機である。中台有事や朝鮮半島有事で米国が海兵隊を含む陸上部隊を実戦投入する可能性はかなり低いと見てよいだろう。少なくとも危機の初期段階でこの二つのシナリオに海兵隊が組み込まれる可能性は実は低い。さらに、中国の脅威の本質も変化していると言われる。中国が重視しているのは、対衛星やサイバー、対空、対艦攻撃の能力向上だ。中国人民解放軍海軍の空母保有や戦闘機の近代化などといった従来の脅威に新たな側面が加わり、対中軍事戦略は多層化する必要に迫られる。中国への抑止力を前提の一つに含んでいた沖縄の地理的優位性を強調する論理にも影響する変化である。
 海兵隊の任務の一つとして重要性を増しているのは、機動性を誇る部隊の性質を活かして、アジアにおける友好国、同盟国との共同訓練を繰り返し、軍事交流を深めて信頼醸成を図ると同時に米国のプレゼンスを示すことだ。 さらに、最近では災害地に緊急展開して人道支援を行うことも海兵隊の重要な任務として位置づけられている。つまり、在沖海兵隊は、中国などアジア諸国に対する「政治的シンボル」としての価値を持つ。必要に応じた編成が容易でかつ機動部隊として迅速な展開が可能な米海兵隊とその航空支援機能が日米同盟に基づいてアジアのハブ的な位置にある沖縄に存在していることで、日米同盟の安泰と米国の地域へのコミットメントという単純明快なメッセージを目に見える形で示しているわけだ。裏を返せば、日米両国が在沖海兵隊の変わりとなるシンボルを確立することが出来れば、海兵隊が沖縄に駐留する必要性は低下するのではないだろうか。


(2)在沖米軍再編の今後

<概観>

 鳩山首相は、普天間移設問題について今年 5 月には結論を下す意向を示している。沖縄の期待にどう応えるのか。果たして民主党は普天間飛行場の移設問題をリセットしたのか。米国側の一番の懸念はそこにある。また一から始めることへの嫌悪と焦燥感だ。米国側は、鳩山政権も現行案しかないことに気づく時が来ると繰り返している。沖縄では、世論調査を通して県民の民意は県外移設であることが示されている。しかし一方で、仲井眞県知事は、辺野古沿岸部へ移設するという現行案を容認する姿勢を崩していない。鳩山政権の真意がわからないからだ。現行案には少なくとも実現性が確保されている。今これを手放せば、普天間の危険性除去という緊急の課題の解決への手段を失うことになりかねない。県外移設を切望しつつも、その実現性を保証する日本政府の政治力に不安がある。県民の中にも、仲井眞知事の方針に賛同する者も少なくはない。
 抑止力の維持と沖縄の負担軽減の両方を目指したものが現行案であった。日米両政府はこれまで、軍事戦略的に普天間飛行場の機能を沖縄に維持することが重要だと説明してきた。しかし、報道等で明らかになってきているのは、海兵隊の機動性を低下させない場所であれば、米国側は県外への移設を受け入れる用意はあったということだ。実は、日本政府の政治的な怠慢の結果が在沖米軍再編の現行案であったのだろうか。
 現時点で、鳩山内閣は決断していない。少なくともどのような形で決着をつけるのかまだ分からない。政府内でも意見の食い違いが見られる。「沖縄の負担軽減」を目指す点で政権内での意見は一致しているようだが、負担軽減の程度と方法の認識に温度差があるように見える。


<沖縄の視点>

 沖縄県は、政策判断が困難な現状にある。鳩山新政権の真意がつかめない。民主党が確固とした代替案を持って県外移設を訴えていたわけではないことは政権発足後に露呈している。沖縄の民意も一枚岩ではない。仲井眞知事や名護市長は条件つきで辺野古沿岸への代替施設建設を容認してきた。鳩山政権発足後も、最善は県外移設としながらも、実現性が確保されている現実的な選択として現行案を受け入れている。県議会は県内移設への反対派が多数を占める。沖縄では昨年 8 月の衆院選でも全区で県内移設に反対する候補者が勝利した。報道機関等の世論調査では、県外移設支持が圧倒的多数。民意のねじれが生じている。県民は、民主党がこれまで「最低でも県外移設」を主張してきたこと、鳩山政権が現行案の見直しに言及したことで、普天間問題はリセットされたと認識し、県外移設への期待が高まっている。もし、鳩山政権がやはり辺野古沿岸部あるいは県内移設しかないという結論を出せば、政府への不信感が高まり、基地反対運動が再燃する可能性が高い。今年 1 月の名護市長選の結果でまた状況が変わる可能性がある。


<日本政府の視点>

 政権交代を果たし、民主・社民・国民新の三党連立政権が発足。特に在沖米軍基地問題については三党間の見解一致は困難を極めている。2010 年 7 月には参院選が予定されている。鳩山政権はそれまでに外交政策で成果をあげたいところだ。参院選までに献金問題をめぐって鳩山首相の退陣が決まる可能性もある。あるいは、献金問題で退陣するよりは、普天間問題で修正現行案あるいは県内移設で決断し国内政治的な決着をつけて勇退する可能性もある。沖縄県や名護市が求める滑走路の沖合移動を認めることを米国側に確約させ辺野古案で決断というシナリオだ。しかし、これであれば、わざわざ名護市長選を待つ必要がなく昨年末までには決断していたはずだ。さらに、米国側が合意の範囲内であれば滑走路の沖合移動を容認する旨をすでに示唆していることから、それ以上の譲歩を米国側から引き出せなければ新政権の外交手腕が批判されるだろう。アフガニスタンに対する民生支援と額面をすでに米国側に示しており、対米交渉カードが残されていない。あるとすれば、自衛隊と米軍との連携強化を具体化していくことだろう。普天間問題を沖縄が納得する形で解決することが日米同盟の強化につながることを施策を持って米国側に示す必要がある。連立政権の維持といった国内政治事情での理解を求めるのでは、米国側は納得しない。また、今年2月には米国では「4 年ごとの国防見直し」(QDR)が発表される予定であり、その中で海外駐留米軍の位置づけと今後の方向性を見極めてから対米交渉に臨む可能性もある。


<米国の視点>

 とにかく早く解決したいというのが本音だろう。米国側が現行案にこだわる一番の理由は、すでに練られた計画であり、これが米軍再編を果たす最短の策だからだ。米議会が予算を承認しているうちに実施段階まで進めたい。また、国務省や国防総省にはクリントン政権時に SACO 合意に深く関与していた人物も多く、日本側との再交渉で得られる成果に対して懐疑的だ。日本の国内事情に左右され計画実施が遅滞することは避けたい。環境アセスメントは着々と進んでおり、現行案は進行中という認識だ。名護市や沖縄県が求めている滑走路の沖合移動に「現行案の範囲内で」応じる姿勢を示唆している。


安保 50 年:日米のアプローチ

 今年 1 月、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(日米安保条約)は 50 回目の誕生日を迎えた。1960 年の締結以来、日米安保条約は日米同盟の根幹を成し、日米同盟は日本の外交政策の基軸であり続けている。
 日米同盟は、アジア太平洋の平和と安定に貢献してきた。これは、今後も変わらない。アジア太平洋地域において、多国間の安保の枠組みが欠落したまま日米同盟という基軸が形骸化あるいは解消されれば、地域の安定が失われる危険がある。
 自民党が政権与党の時代は、日本政府は米国からの外圧と日本防衛の論理を理由に沖縄の基地問題の根本的解決を避けてきた。しかし、政権が交代し、自立した外交を目指す新政権であればこそ、小手先での解決を図るべきではない。また、米国も民主国家として再生を図る日本の新たな政治的状況を尊重すべきだ。辺野古沿岸への県内移設が最善・最短の策という論理は、もやは沖縄にとって受け入れがたいものとなっている。すでに日米合意があり計画が策定されているから、という理由はもはや正当性を持たない。
 もし、普天間飛行場の移設問題が再燃していなければ、今年を節目として、日米同盟の強化・拡充の方向性を示す両国間の共同宣言などが現時点ですでに発表されていたかもしれない。しかし、普天間飛行場移設問題が入り口となったオバマ政権と鳩山政権間の日米外交は、とてもそんな雰囲気ではなかった。日米間では、在沖米軍再編の問題の日米同盟における位置づけが違った。オバマ政権はブッシュ前政権の方針を踏襲し日米合意を着実に履行することで日米間の問題の火種を解決しようとした。一方、鳩山新政権は、沖縄の負担の一層の軽減という観点から自公前政権の方針の見直しを図り、米国へ理解を求めた。
 在沖米軍再編計画の合意に至るまでの過程で、沖縄、日本政府、米政府それぞれに蓄積された相互不信が再燃し、日米間の交渉を難しくしていることも否めない。日本で政権交代が実現し、連立政権が発足したことで普天間飛行場の移設問題がリセットされたことに変わりはないが、米国側がかたくなな姿勢で対日交渉に臨む裏には、「日本政府」に対する信頼感の欠如や不信感が存在している。また、日本の新政権が現行の日米合意の見直しを図る理由は、単なる「反自民」や「反基地」ではなく、現行案で真に沖縄の負担が軽減され日米同盟の強化を果たせるのかどうかに疑問を持ったからに他ならない。さらに、グアム協定という国家間の取り極めが駆け込みで締結され在沖米軍再編計画のパッケージ化と日本側の支出が日米間で固定されたことも、沖縄の感情を逆撫でしただけでなく、日本新政権の選択肢の幅を狭め問題を複雑にしてしまった。
 しかし、今年に入って、普天間移設問題に終始していた日米関係に変化の兆しが見え始めた。鳩山政権発足以来、普天間飛行場移設問題をめぐり関係悪化ばかりが注目された日米同盟だが、年明け 1 月 12 日には、岡田外相とクリントン国務長官との外相会談がハワイで開催され、安保 50 周年を迎える日米同盟の維持と強化に向けた新たな出発点として位置づけられた。日米同盟の本質と意義を再確認するという姿勢が米国側から示されたのである。日米両国は、普天間飛行場の移設問題が日米同盟の全てではないことをあらためて確認し合い、日米同盟の基盤は決して揺るがないという確固たるメッセージを世界に向けて発した。重要な転機である。日米両政府は、普天間移設問題で日米関係に生じた歪みが同盟崩壊への序章とならないよう、相互理解に努め、日米共通の世界観に基づいた新たな同盟関係を構築すべきである。
 日米両国が日米同盟の長期的な発展を目指すのであれば、在沖米軍問題を沖縄の負担軽減を実現する形で解決しなければならない。安保体制に基づいて米国は日本の防衛への義務を負い、日本は米軍に基地を提供し駐留を認める義務を負う。日本が果たすべき義務を沖縄だけが不平等に負わされるべきではない。沖縄はこれまで十分にその義務を果たしてきた。在沖米軍再編問題の再燃は、果たして日本にその用意と覚悟があるのかを問うている。


巻末資料

6-1. 在沖米軍再編関連:2009 年主要事項表

2009年 事柄
1 月 20 日 バラク・フセイン・オバマ氏(民主党)が第 44 代米大統領に就任。新政権発足。
2 月 17 日 クリントン米国務長官来日。中曽根外相とクリントン長官は「在沖米軍海兵隊のグアム移転に関する協定」(グアム協定)に署名。ロードマップの確実な履行に向けた動き。
3 月 25 日 沖縄県議会はグアム協定の批准反対で意見書を可決。
27 日 普天間飛行場代替施設におけるヘリパッド 4 カ所の併設計画が判明。
4 月 1 日 沖縄防衛局は普天間飛行場の名護市辺野古への代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)の準備書を沖縄県や名護市、宜野座村に提出。滑走路の沖合移動の是非については 9 月以降のアセス手続き最終段階の評価書へ先送り。
6 日 衆院外務委員会が来県。知事と非公式に面談し、グアム協定等について意見交換。
8 日 「普天間」協議会(政府、沖縄県、北部自治体)の第 9 回会合が開催。仲井眞知事は沖合移動を要求。政府側は地元意見へ誠実に対応するとしながらも移設の着実な実施が重要との姿勢。
10 日 衆院外務委員会でグアム協定可決。中曽根外相は同委員会でグアム協定には法的拘束力はないと述べた。
20 日 参院外交防衛委員会が来沖し、仲井眞知事、島袋名護市長、伊波宜野湾市長らと意見交換。
5 月 1 日 浜田防衛相とゲーツ米国防長官がワシントンで会談し、日米関係の強化で合意。
7 日 米国防総省は、2010 年度予算案を議会に提出。この中で、在沖海兵隊のグアム移転事業費が初めて盛り込まれ、3 億 7 千 800 万ドル(約 375 億円)が計上された。
13 日 グアム協定が国会で承認。12 日の参院外交防衛委員会と 13 日の参院本会議で否決され、両院協議会でも合意にいたらず、4 月に可決した衆院議決に基づき、国会承認となった。
14 日 米軍再編に関する沖縄タイムスと朝日新聞共同での県民世論調査の結果が発表された。普天間飛行場移設問題について、県内移設反対は 68%、賛成は 18%。仲井眞知事への支持率は 50%で、2007 年 7 月から 6%減。基地問題への取り組みについては 42%が「評価する」と答え、「評価しない」は 32%。
19 日 日米間でグアム協定に関する公文が交換され、グアム協定が正式に発効。日本では国会承認を得たが、米国では議会承認のない行政協定の位置づけ。
31 日 アセス準備書の公告縦覧終了。
6 月 17 日 米下院軍事委員会が 2010 会計年度国防権限法案を可決。この中で、普天間飛行場移設の現行計画は飛行安全上も問題があるとして事実上反対する条項を盛り込む。
24 日 米政府は、下院軍事委員会で可決された法案に対し「日米合意を危機にさらす」として修正を求めた。
25 日 米下院は、2010 会計年度国防権限法案を可決。普天間飛行場移設計画を制限する条項に関する米政府側の修正要請には応じず。
7 月 11 日 日米両政府は、在沖米海兵隊のグアム移転に関連した 2009 年度の事業費として日本政府負担分約 3億 3600 万ドル(約 346 億円)の支出を規定した交換文書を中曽根外相とズムワルト駐日米臨時大使との間で取り交わした。
15 日 米国防総省のグレッグソン次官補らが来沖し、仲井眞知事らと面談。知事は、嘉手納飛行場の騒音軽減や普天間飛行場の危険性除去などを要請。
18 日 日米安全保障協議委員会(2+2)が開かれ、在日米軍再編のロードマップの確実な実施に向けた両国の役割等について検討していく重要性を確認。米側から、キャンベル国務次官補、グレッグソン国防次官補が参加。
27 日 民主党マニュフェスト発表。普天間基地問題に言及せず。「沖縄ビジョン」(改訂版 2005/8)からの後退と受け止められる。民主党県連は、「県外移設」を盛り込むよう鳩山代表宛に要望書を提出。
8 月 9 日 民主党は衆院選での政権交代を前提にした対米外交の基本方針を固めたと報じられる。普天間飛行場の県外移転や日米地位協定改定などについてただちに交渉入りは求めず、米国との信頼関係構築を優先させる意向。
26 日 中曽根外相とルース新駐日米大使が会談。在日米軍再編のロードマップを着実に実施することを確認。
28 日 ニューヨーク・タイムズ紙が、民主党鳩山代表の論説(Voice 9 月号掲載)を抜粋掲載。民主党政権誕生の可能性が高まっていることを受け、米国内では、鳩山代表の対米方針について危惧する声もあがった。
28 日 レイ・メイバス新海軍長官が来沖し名護市のキャンプ・シュワブ視察。
30 日 日本で衆院選挙。民主党圧勝。自民党大敗。沖縄では、民主党推薦候補者が全4区で勝利。
31 日 沖縄選挙区・比例区の衆院選当選者 5 人、全員が普天間飛行場の移設に伴う辺野古への代替施設建設に反対することで一致。(沖縄タイムス主催の 8/31 座談会で)
9 月 1 日 民主党県連喜納代表らが仲井眞知事を訪れ、普天間飛行場の「県外」移設での同調を求める。仲井眞知事は、普天間の県外移設に対する民主党の本気度と実行性への懸念を隠さず。
8 日 民主、社民、国民新の三党、連立政権樹立に向けた協議を開催。社民は普天間基地代替施設建設の見直しの明文化を求めるが、民主は応じず。
9 日 三党連立政権樹立。普天間飛行場の辺野古への移設の見直しは盛り込まず。合意内容は、日米地位協定の改定を提起し、在日米軍再編や基地の在り方について見直しの方向で臨むことを明記、緊密で対等な日米同盟関係の構築など。
12 日 米国が 4 月初旬に米軍三沢基地(青森)の F16 戦闘機全てを早ければ年内から撤収させるとともに、嘉手納基地の F15 戦闘機(約 50 機余)の一部を削減する構想を日本側に打診していたと報じられる。日本側は難色を示し保留状態にあると伝えられた。
16 日 鳩山政権発足(民主、社民、国民新の三党連立政権)
17-18 日 キャンベル国務次官補が来日。18 日の記者会見で、日米間の対話と協議の必要性を強調。普天間飛行場の移設については現行案が最善としながらも、新政権の方針について米側は話し合う用意はあると述べる。
21-26 日 鳩山首相、外交デビュー(訪米、国連、日中首脳会談、日米首脳会談)
23 日 ニューヨークで鳩山ーオバマ日米首脳会談。日米同盟の強化で合意。在日米軍再編問題は言及されなかった。
24 日 北沢防衛相来沖。
25 日 ルース駐日米大使と北沢防衛相が会談。普天間基地問題等について意見交換。
29 日 仲井眞沖縄県知事、県議会代表質問への答弁で「県外移設がベストだが、一日も早い危険性除去のためには、県内移設もやむを得ない」
10 月 1 日 沖縄防衛局が 2008 年 6 月から始めていた名護市キャンプ・シュワブ内の下士官宿舎など 4 棟は 1 日までに完成しており、別の宿舎など 4 棟の工事も 7 月に着工し建設が進んでいると報道される。(沖縄タイムス、10/2)
7 日 米上下両院は、2010 会計年度国防権限法案で、米海兵隊普天間飛行場の移設計画に反対した下院の法案を修正し、現行計画を事実上容認することで合意。2010 年度の国防予算案に在沖海兵隊約 8000 人のグアム移転事業費として約 3 億 8000 万ドル(約 330 億円)が初めて計上された。
12 日 長島防衛政務官ーキャンベル国務次官補会談。会談後、キャンベル国務次官補は、普天間問題の結論は大統領訪日後との見方を示した。
13 日 仲井眞知事は、環境アセス準備書に対する意見書を防衛施設局に提出。滑走路の可能な限りの沖合移動を求めた。
14 日 「うるの会」は、北沢防衛相と面会し、来年度予算の概算要求で普天間飛行場移設関連経費の凍結を要請。防衛相は政権方針が出ていないことを理由に「仮置き」すると返答。
15 日 米海兵隊の「2010 年度海兵隊航空計画」が発表され、普天間代替施設へのオスプリー配備が明記されたことが報じられる。
18 日 米国防総省高官が、現行計画での普天間飛行場代替施設滑走路の 50 メートル沖合移動は検討可能と発言したことが報じられる。
20 日 ゲーツ国防長官来日。「現行案が唯一可能なものだ」と述べる。
20-21 日 ゲーツ長官来日での会談で、日本側は嘉手納飛行場への統合案を打診したが、「運用上、厳しい」として米側は拒否。
23 日 岡田外相は、普天間飛行場の県内移設の方針を表明。
26 日 臨時国会召集。鳩山首相の所信表明。普天間移設問題には踏み込まず。
27 日 うるの会は、北沢防衛相に対し、普天間飛行場の硫黄島への移設案を提案。
28 日 米国で 2010 会計年度国防権限法案が成立。在沖海兵隊約 8000 人のグアム移転事業費として約 3 億8000 万ドルが国防予算に初めて盛り込まれた。
29 日 岡田外相と北沢防衛相は、ライス在日米軍司令官やバサラ国防総省日本部長と会談。米側は嘉手納統合案が困難である理由を説明した。
30 日 下地幹郎衆院議員(国民新)は 4 日の宮城嘉手納町長との会談で、普天間飛行場移設に関し、15 年期限つきの嘉手納統合案を提示していたと琉球新報が報じた。宮城町長は統合案は認めないと明言。これについて、平野官房長官は 29 日、政府としての案ではなく下地氏の私案だろうと説明。
30 日 仲井眞知事、嘉手納統合案について否定的な見解を示す。
31 日 民主党県連は、次期名護市長選で稲嶺進氏を推薦することを決定。
11 月 3 日 琉球新報と毎日新聞が共同で行った世論調査(10/31 と 11/1)の結果、普天間飛行場の代替施設について県外・国外移設を求める声は 69.7%。辺野古への移設への反対は 67%で賛成は 19.6%。嘉手納統合案に対して反対は 71.8%で賛成は 14.8%。(琉球新報、11/3)
4-11 日 渉外知事会として神奈川県松沢知事、沖縄県仲井眞知事訪米。在日米軍の環境保護の強化を求める。5 日には、松沢知事が普天間問題について辺野古のみが解決策と発言し波紋をよぶ。
5 日 キャンベル国務次官補来日。オバマ大統領訪日に向け普天間問題など調整続行を確認。
8 日 「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民集会」が沖縄宜野湾市で開かれる。主催者側発表によれば参加者は 21000 人。訪米中の仲井眞知事をはじめ県三役は参加せず。
12 日 島袋名護市長は、緊急の記者会見を行い、沖合修正案容認の姿勢を堅持しつつも政府側から代替案が速やかに提示されるのであれば歓迎するとの声明を発表。
13 日 オバマ大統領来日、日米首脳会談。普天間移設に関する作業グループ設置で合意。鳩山首相は作業グループの結論を一番重い決断として受け止めると表明。 しかし、作業グループでの協議がロードマップを前提としたものかどうかについて日米間での解釈が異なることが露呈。
15 日 岡田外相、就任後初めて来沖。キャンプ・シュワブ、普天間飛行場や嘉手納飛行場を視察。仲井眞知事と会談。
15 日 琉球新報は、1998 年 3 月に開かれた普天間飛行場移設に関する日米の非公式協議で、米側のキャンベル国防次官補代理(当時)が、北九州や四国など県外への移設は可能だと日本側に伝えていたと報じた。
16 日 鳩山首相は沖縄県での首長選日程に絡めて来年半ば(名護市長選と知事選の中間)に結論を出す意向を表明。
17 日 普天間飛行場移設問題に関する日米閣僚級作業グループの初会合が開催された。出席者は、日本側から岡田外相、北沢防衛相、米側からグレッグソン国防次官補、ルース駐日大使(クリントン国務長官とゲーツ国防長官代理として)
17 日 米上院は、在沖海兵隊約 8000 人のグアムへの移転事業費を大幅に削減した軍事施設建設に関する2010 会計年度の予算法案を可決。
19 日 米海軍、グアムでの環境影響評価報告書ドラフトを発表。在沖海兵隊の移転について、グアムでの実弾訓練場の必要性を指摘。
21 日 岡田外相は:普天間方針について年内に決着する必要があるとした。
24 日 県選出・出身の与党国会議員らでつくる「うるの会」は、普天間飛行場の県外・国外移設を鳩山首相に要請。うるの会と関係閣僚らで構成する「検証委員会」の設置を提唱。
25 日 社民党は普天間飛行場を硫黄島やグアムなど県外・国外移設への求める緊急提言を行う。
27 日 鳩山首相と仲井眞知事が首相官邸で非公式に意見交換。
27 日 沖縄市、嘉手納町、北谷町の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は 27 日、普天間飛行場機能の嘉手納飛行場への統合案に反対する共同声明を発表。
28 日 自民党県連は 28 日、普天間移設問題で鳩山内閣が年内に政府方針を決めなければ、「県外移設」を要求することを決定。
30 日 仲井眞知事は 30 日、鳩山首相と会談後、来沖したルース駐日米大使と会談。
12 月 1 日 橋下大阪府知事が、普天間移設問題について、仮に打診があった場合、関西空港、神戸空港を受け入れ先とすることについて検討することを否定しない考えを示した。
3 日 名護市議会の野党議員は、普天間飛行場の県外・国外移設を求める決議案を提出することを決定。
4 日 鳩山首相、日米合意案以外も検討するよう指示したことを認める一方、「辺野古は生きている」として辺野古案も選択肢に残っていることを示唆。
4 日 日米両政府は普天間飛行場移設に関する閣僚級作業グループ(WG)の第 2 回会合を外務省で開催。米側は同問題の決着が越年することに懸念を表明。
5 日 防衛省内で普天間飛行場移設候補地の一つとして鹿児島県・馬毛島(西之表市)を検討していることが報じられる。
5 日 岡田外相が来沖。普天間移設問題について意見交換や視察。
6 日 岡田外相が嘉手納統合案を断念する意向であることが報じられる。
9 日 北沢防衛相、グアムの米空・海軍基地を視察。
9 日 米上下両院は、在沖海兵隊のグアム移転事業費を盛り込んだ 2010 年会計年度の軍事施設建設に関する予算法案について、上院が削減した額をほぼ復活させ、約 3 億ドルを計上することで合意。
9 日 鹿児島県西之表市議会は、同市の馬毛島が普天間飛行場の移設候補地として取りざたされていることを受け、移設反対決議を全会一致で可決。
13 日 普天間飛行場移設問題について、鳩山政権が日米合意の名護市辺野古への移設を受け入れた場合、普天間飛行場のヘリ部隊と地上部隊の訓練の一部を東富士演習場に移す案を米政府が作成していると報じられる。しかし、その後 18 日、米政府関係者は同案を日本側に提示したことはないとして否定。
15 日 与党三党の基本政策閣僚委員会が開催。普天間飛行場の移設先について年内決定を先送りし来年 5 月までに結論を出す方針を示した。移設先について新たに与党三党の実務者委員会を設置し協議することで合意。鳩山首相は、辺野古以外を模索する姿勢を明らかにした。
21 日 北沢防衛相は、普天間飛行場移設に関して日米合意の現行計画に基づく辺野古での環境影響評価(アセスメント)評価書の年内提出を見送る方針を示した。
25 日 クリントン国務長官と藤崎駐米大使が普天間飛行場移設問題で会談。
25 日 鳩山首相は普天間飛行場の移設問題について 2010 年 5 月までに移設先を含めて決定することを表明。24 日には、岡田外相がクリントン国務長官との電話会談で政府方針を伝えた。
26 日 仲井眞知事は来年 1 月の名護市長選で現職の島袋市長を支援する考えを表明。
13 日 鳩山首相は、普天間飛行場のグアムへの全面移設を否定。
2010年
1 月 24 日 名護市長選挙。現職の島袋吉和氏と前名護市教育長の稲嶺進氏(無所属)が立候補。
7 月 参院選予定。
11 月 沖縄県知事選予定。

6-2. 在沖米軍再編関連:2009 年関係者発言集

2009年 日本側 米側 沖縄側
2 月 中曽根外相:17 日:グアム協定署名で:「グアム移転協定の署名は在日米軍再編に対する(日米)両国の強固な約束を示すものだ」(琉球朝日放送ホームページ、2/17)

小沢一郎民主党代表:25 日:「米国もこの時代に前線に部隊を置いておく意味はあまりない。軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第7艦隊だけで十分」(産経電子版、2/25)
クリントン米国務長官:16 日:来日歓迎式典で:「日米関係は世界的にも極めて重要であり、その基盤は日米が共有する安全保障と反映への責務だ」(産経電子版、2/16)

クリントン米国務長官:17 日:グアム協定署名で:「この同意は太平洋地域における米軍近代化の狙いを反映したものだ」(琉球朝日放送ホームページ、2/17)
仲井眞沖縄県知事:17 日:グアム協定が日米間で署名されたことを受け:「今回の協定は日米の合意内容の再確認であり、県や地元が求めている沖合移動には影響しないと考えている」(琉球朝日放送ホームページ、2/17)
3 月 前原民主党副代表:衆院沖特委員長就任に際しての琉球新報のインタビュー:「キャンプ・シュワブに移すという計画がそもそも無理だった。あのきれいな海を埋め立てるのは駄目だ。深さがあるので時間も金もかかるし、環境問題もある。われわれは、(沖縄ビジョンで普天間の県外移設を)約束しているので米側としっかりと交渉する」(琉球新報、3/5)
4 月 梅本和義・外務省北米局長:3 日:衆院外務委員会で、グアムへ移転する在沖海兵隊の総数に関して:「定員 1 万8 千人から(8 千人を)減らす。どの部隊を移転するかは米側で詰めている」と述べた。また、海外派遣などに伴い、在沖海兵隊各部隊は定員を満たしていないことを理由に「移転時でないと何人動くかは出てこない」(沖縄タイムス、4/4)

中曽根外相:10 日:衆院外務委員会での証言:グアム協定について:仮に日本政府が普天間飛行場の代替施設を建設しない場合でも協定に違反するものではなく、グアム協定は法的義務を課すものではなく、米側も同様の意見だ。(衆議院外務委員会ホームページ掲載の 4/10 の会議録本文より)

町村前官房長官(福田内閣):琉球新報のインタビューで:沖合移動について「50 メートルや数十メートルの微修正は、日本国の国家主権の判断の範疇で、アセスをやり直さなくてもよい範囲内だ。こんなところに米国が最後までこだわるとは今でも思っていない」(琉球新報、4/16)
仲井眞知事:1 日:普天間アセス準備書が提出されたが、滑走路の沖合移動の是非が先送りとなったことで:「沖合移動がなされていないのは残念。騒音の問題は大きい。可能な限り沖合などへ移動するよう求めたい」(沖縄タイムス、4/2)

仲里沖縄県副知事:6 日:来県した衆議院外務委員会の委員らに対し:「(グアム)協定締結で法的な枠組みが定められ、日米両政府へ法的な縛りができる。着実な実現に弾みがつくと期待している」(沖縄タイムス、4/11)

仲井眞知事:8 日:「普天間協議会」後、沖合移動を求めていることについて:「私は県内移設やむなしの立場だが、無条件で何でも結構ですというわけにはいかない」(沖縄タイムス、4/9)

民主党沖縄県連:10 日:衆院外務委員会でグアム協定が可決されたことで:「辺野古への新基地建設を前提としている協定は県民の立場から到底認められない」(沖縄タイムス、4/11)

参院外交防衛委員会来沖での意見交換(20 日)で沖縄内でも見解は一致していないことが露呈。
  1. 仲井眞知事:グアム協定について県民の負担軽減につながると評価。
  2. 高嶺県議会議長:グアム協定について新基地建設につながるとして批判。
  3. 伊波宜野湾市長:在沖海兵隊のグアム移転の実態に疑問を呈した。
  4. 島袋名護市長:沖合移動を求める。(琉球新報、4/21)
5 月 河村官房長官:8 日:米国防総省が 7日に議会へ提出した 2010 年度予算案で在沖海兵隊のグアムへの移転事業費が初めて計上されたことをうけて:「米軍再編が具体的に動いている証左だ。工程表(ロードマップ)に従って、日本も対応した措置を進めたい」(沖縄タイムス、5/9)

岡田民主党副代表:15 日:公開討論会で、民主党がグアム協定に反対した理由として:「普天間(飛行場の辺野古へ)の移設を前提としていたから」「難しい問題だが、(沖縄に)普天間と嘉手納という極めて大きな基地が二つもあるのが普通なのか。これから30 年、50 年と続けていくべきなのか。こういった観点に立ち、もう一度、しっかりした議論を日米間でしなければならない」(琉球新報、5/16)

鳩山民主党代表:16 日:民主党代表への就任会見で普天間飛行場移設問題について:「県外移設を目指すという考え方を変えるつもりはない。政権を取った後も基本的に県外移設を目指し、進めていきたい」(琉球新報、7/28)

中曽根外相:19 日:民主党の鳩山新代表が、普天間飛行場の県外移設を目指すと発言したことについて:「(移設先を)県外のどこと言わないと具体性が全然ない」(沖縄タイムス、5/20)

民主党浅尾慶一郎参院議員:30 日:テレビ朝日番組で:「(民主党の)沖縄ビジョンの心は県内に新たな基地を造らないということだ。想像できるとすれば、(普天間飛行場の機能を)嘉手納に統合し、普天間は緊急時だけ残すという発想はあり得る」
コンウェイ米海兵隊司令官:6 日:米下院歳出委員会で、在沖海兵隊のグアム移転について費用不足と 2014 年という期限に関して:「インフラ整備や訓練関係などさまざまなことを考えるともっと多くの資金が必要だ」「期限を定めるべきではない」(琉球新報、5/12)

ズムワルト駐日米臨時代理大使:13日:グアム協定が日本の国会で承認されたことを受け:「ロードマップの完全な実施に向けた大きな一歩だ」(沖縄タイムス、5/14)

メア在沖米総領事:14 日:「負担軽減だけが目的であれば、施設閉鎖か県外移設できるが、普天間の能力を維持する必要がある」(沖縄タイムス、5/14)

ゲーツ米国防長官:シンガポールで:日米同盟は進化していると述べ、日本の国会でのグアム協定承認を評価。「グアム協定は、日米同盟の強化や米国のアジアへの関与の維持という米国の計画を実施する上で重要なステップとなる。」(ディフェンスリンク、5/30)
仲井眞知事:8 日:米国防総省が 7 日に議会へ提出した 2010 年度予算案で在沖海兵隊のグアムへの移転事業費が初めて計上されたことをうけて:「普天間もベストは無論県外だが、早く進めた方がいい」(沖縄タイムズ、5/9)

グアム協定に関する沖縄選出国会議員見解:
  1. 喜納議員(民主):「協定は両政府への法的拘束力を持たない。政権交代で覆す」
  2. 下地議員(国民新):「米軍再編のパッケージにおける将来像が見えてこないことが問題だ」
  3. 山内議員(社民):「協定で基地負担が軽減されるかは不透明だ」(沖縄タイムス、5/13)
6 月 麻生首相:5 日:民主党鳩山代表の普天間飛行場の県外移設方針について:「沖縄の持つ抑止力がきちんと保持されるという保証を見せないと国防を預かる立場としては極めて無責任だ」と批判。また「今の所(キャンプ・シュワブ沿岸部)に決まるまで県外を含め多くの案が検討されたが移転を受け入れてくれる県はなかった」(沖縄タイムス、6/6)

民主党岡田幹事長:「世界」7 月号に掲載されたインタビュー:「われわれが本当に普天間の現状が問題だというなら、どこかで引き受ける覚悟も必要。最初から県外移設の可能性を排除うしているから、県内での移転という話になり、基地の固定化が変わらない」

自民党細田幹事長:10 日:沖縄県側が求める滑走路の沖合移動について:「微修正くらいは考え、あの辺(辺野古沖)で決着するというのが、今の普天間問題を乗り越える意味で大事だ」(琉球新報、6/11)

民主党岡田幹事長:25 日:ミッシェル・フローノイ米国防次官との会談で、沖縄の負担軽減のため在沖米軍再編計画の見直しの必要を提起。(琉球新報、6/26)
コンウェイ米海兵隊司令官:4 日:上院軍事委員会の公聴会で、在日米軍再編計画について:「検討に値する修正案がある」と証言。また、在沖海兵隊のグアム移転について、当初の見積もりより費用がかかること、訓練環境の問題などをあげ、懸念があると指摘した。(琉球新報、6/6)

メア在沖米総領事:8 日:普天間移設問題について:「日本政府に再交渉する提案はまったくないと強調したい」(琉球新報、6/9)

グレッグソン米国防次官補:9 日:記者団に対し、在日米軍再編の計画修正の可能性を否定し、(米側は)「再交渉するつもりはない」と述べた。

カート・キャンベル氏:10 日:国務次官補への指名承認公聴会で、グアム協定を評価。地域において維持可能な米軍プレゼンスを作り出す一方で抑止力も強化するというロードマップは、グアム協定によって次の段階へ踏み出すことになる、と述べた。(米国務省発表、6/10)
民主党県連喜納代表:沖縄タイムス紙のインタビューで、普天間飛行場移設問題について:「県外・国外という県民の願う方向で進めるべきだ。民主党が政権を取ってから具体的な対米交渉をしていく」(沖縄タイムス、6/5)

国民新党県連の下地幹郎衆議院議員:8 日:民主党県連の喜納代表との共同記者会見で、嘉手納統合案について:「私が新嘉手納統合の旗を降ろしたことで、あとは両党がすべての選択肢を論議していく。政権公約をつくる中で嘉手納統合、海外移設、本土移設とさまざまな選択肢が出てくる。」(琉球新報、6/9)

仲井眞知事:24 日:県議会の代表質問で普天間移設について:「県外移設がベストだが、米軍再編協議の経緯から県外移設は困難。一日も早い危険性除去のため、県内移設もやむを得ない」(沖縄タイムス、6/25)
7 月 浜田防衛相:8 日(来沖中):辺野古への普天間代替施設滑走路の沖合移動について:「政府案が妥当と判断している。(米政府との)再交渉は現時点で考えていない」(沖縄タイムス、7/9)

長嶋民主党政策調査会長:27 日:27日発表の民主党のマニュフェストに普天間飛行場の県外移設が盛り込まれなかったことについて:「基本的に考え方は変えていない」「政権交代を実現し、即座にこの話ができるかどうかは難しい。その前にオバマ大統領との信頼関係をつくるなど、外交の基本を構築した上で基地の問題について話し合う」(7/28)
メア在沖米総領事:沖縄タイムスのインタビューに答え、普天間問題について:「新しい米軍基地を造ることは難しく、日本政府が県外移転は無理と判断した。米軍再編の基本は既存の施設に移設しないといけない、と日米両政府は考えた」「(県外移設について)正式提案というよりさまざまなアイディアが浮上した。北海道や九州などいろいろ考え、空港などの施設を見て、移転可能かどうかを検討したが、(再編協議の)早い段階で無理だと分かった。なぜなら、普天間を使う海兵隊は航空・陸上部隊は一体的に機能しており、本土ですべての施設を新たに建設する必要が生じる。現実的ではない」「米国は 1 月に政権交代があったが 2月にグアム協定を締結した。安保政策は超党派の政策であるべきだ。日本が県外移転と言ったらもう終わりでしょう。合意を変更したら、どこまで変えるかーとなり、すべてが崩れる」(沖縄タイムス、7/15)

グレッグソン米国防次官補:15 日来沖中:知事らとの面談後の記者会見で、民主党が主張する普天間飛行場の県外移設について:「われわれの関係は日本政府とであって特定の政党とではない。政権が交代しようとも、日本政府が合意を尊重することを期待する」と従来の合意内容の実施を求めた。また、辺野古での移設計画について県側が求める滑走路の沖合移動に関し、「現在の位置が最上」としながらも「環境影響評価結果に注目する。日本政府が最終的に建設位置を決定する」(琉球新報、7/16)

ライス在日米軍司令官(米空軍中将):28 日:記者会見で、民主党が普天間飛行場の県外移設を目指していることについて:「(在日米軍再編合意が)パッケージ全体として強いものであるため、個々の要素を考えると全体が弱ってしまいかねない。個別の要素については変更しないというのが日米両政府の一貫した立場だ」と述べ、県外移設案を牽制。また、F-22 の嘉手納飛行場への一時配備について、日本は米国の抑止力の恩恵を受けることができると発言。(琉球新報、7/29)
8 月 ケリー米国務省報道官:31 日:衆院選で民主党が圧勝し政権交代が確実になったことで、 在沖米軍再編について:「米国には、日本政府と再交渉する考えは一切ない」(琉球新報、9/2) 仲井眞知事:13 日:沖縄タイムスのインタビューで、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故から 5 週年目を向かえ、普天間移設問題に言及し、「ベストは県外だが辺野古移設やむなしと言っている原点」(沖縄タイムス、8/14)

仲井眞知事:14 日:記者会見で、普天間飛行場の閉鎖について三年を目処とした公約ついて:「相手がある話なので、三年目処は文字通り日本語として「目処」として理解して欲しい。いずれにせよ私の任期内に危険の除去を(実現したい)」(沖縄タイムス、8/15)

仲井眞知事:31 日:衆院選で政権交代が確定したことを受け、普天間移設問題について:「(民主党は)マニュフェストで県外移設をクリアにしていない。米軍再編であれ、移設であれ、国の事業だ。事業者の国がどういう考えを持っているのかうかがいたい」「(環境アセスが)継続されるのかを含め、どうなるのか聞きたい。ストップしたり、引き下げになると、知事意見の言いようもない」(琉球新報、8/31)
9 月 民主党・岡田幹事長:11 日:記者会見で、三党連立合意書に普天間飛行場移設問題について「県外・国外」移設を盛り込まなかったことに関して:「民主党のマニュフェストではそういう表現は使っていない」(琉球新報、9/12)

鳩山首相:23 日:訪米先でのオバマ大統領との首脳会談で:「日米同盟を日本の外交の基軸として重視」「日米安保体制はアジア大平洋地域の平和と安定の礎であり、日米安保を巡るいかなる問題も日米同盟の基盤を強化するかたちで、緊密に協力したい」(外務省発表、9/23)武正外務副大臣:24 日:記者会見で:「11 月のオバマ米大統領の来日を控え、岡田外相が今後 100 日で重点的に取り組むとした地球温暖化、アフガニスタン支援、米軍再編の 3 点のパッケージで協議することになると思う」(沖縄タイムス、9/25)

北沢防衛相:24 日:普天間移設問題について:「沖縄の皆さんは県外・国外移転ということで、民意が直近の衆院選でも極めて鮮明に表明された。民主党が政権を託されたという意味からも極めて重いものがある。」、日米間の米軍再編合意について:「長年の協議で日米両政府間の合意が得られた経緯があり、かなり重い」(琉球新報、9/25)

北沢防衛相:26 日:名護市長らとの会談で:「対米協議は普天間問題だけでなく、アフガニスタンなど大きな問題も含めて、再編問題全体をパッケージで解決を目指すというのが鳩山政権の方針だ」(琉球新報、9/27)

長島防衛政務官:25 日:ルース駐日米大使と北沢防衛相らとの会談に出席し在日米軍再編見直しについて:「すべてひっくり返すとかゼロベースということではない。政権も代わったことだし、これまでのプロセスをレビュー(再検証)したい。本当にさまざまな交渉がベストだったのかという問題を含めレビューし、日米関係をさらに深化させたい」(琉球新報、9/26)
キャンベル国務次官補:18 日訪日中:記者会見で、現行計画が最善としながらも日米間での率直な対話の重要性を指摘。2006 年に合意された在日米軍再編計画は最善の策であるが、鳩山新政権が全体的な日米関係について米国との対話を希望していると理解しており、米国は対話する用意がある、と述べた。(米大使館発表、9/18)

グリーン在沖米総領事:24 日:着任後の記者会見で:「1 日も早く普天間を移設することが望ましいことから、日米合意案が現実的ということで変わらない」「(普天間移設を含む)米軍再編のパッケージについて民主党に疑問があることは認識している。外交チャンネルで歴史や背景、目標を説明して理解を得るよう努力する」「(嘉手納基地への統合案について)90 年代も米軍再編でも研究した。普天間の 60-70 機が嘉手納に移ると騒音が激しくなる。運用の障害もあるが、地元の(騒音の)問題が大きいから結果的にできないと判断した」(琉球新報、9/25)
民主党県連の喜納代表ら:1 日:仲井眞知事と意見交換し「県外・国外」が党の基本方針だと強調し、「県外」での意見の同調を求めた。これに対し、知事は「ベストは県外だと思うが、現実的に(県内は)やむを得ない」と述べた。また、「民主のマニュフェストには普天間問題が抜け落ちている、考えをあらためて話し合いたい」「国の政策が変わるか変わらないかで、われわれの意見も変わることもあり得る」として、民主次第で県側の方針が変わる可能性も示唆。(琉球新報、9/2)

宮城嘉手納町長:26 日:北沢防衛相との面談:「県外移設の方向性を貫いてほしい。嘉手納統合はとんでもない話。基地周辺に住む 20数万人の生活の問題だ。爆音防止協定は履行されていない。米軍再編で戦闘機が訓練移転しても、それ以上の外来機が飛来し騒音軽減につながっていない」と述べた。(琉球新報、9/27)

仲井眞知事:県議会代表質問への答弁で:「県外移設がベストだが、一日も早い危険性除去のためには、県内移設もやむを得ない」(9/29)
10 月 鳩山首相:16 日:普天間飛行場移設問題の結論を出す時期について:「来年には名護市長選(1 月)と県知事選(11 月)がある。知事選までということになるとかなり時間がかかるので、その中間ぐらいの中で結論が必要になってくる」

鳩山首相:23 日:「名護市長選の後と言ったつもりはない。早く結論が出せれば、それにこしたことはない」(読売電子版、10/23)

岡田外相:23 日:記者会見で普天間移設問題について:内閣の見解ではないとしながらも「あまり時間をかけるわけにはいかない。県外というのは事実上選択としては考えられない状況だ」と述べ、県内移設の方針を表明。辺野古と嘉手納とで「よりどちらがましかという判断」で「私は嘉手納統合だと思っている」(朝日電子版、10/23)

鳩山首相:24 日:訪問先のタイで記者団に対し:「最後は私が決める。選択肢を調査し、しかるべく判断する」「それなりの時間がかかる」

岡田外相:30 日:嘉手納統合案について:「果たして案になるかを検証している段階」(産経電子版、10/30)

鳩山首相:30 日:参院本会議で県外移設はまだ選択肢に残っていることを示唆し:「県外、国外(移設)と衆院選前に申し上げた。それは多くの県民がいまだに県外移設を望んでいるからだ。そのことなども勘案し、できる限り県民の意思に沿った結論を出したい」(産経電子版、10/30)
キャンベル米国務次官補:12 日:長島政務官との会談後:「11 月のオバマ大統領来日までに普天間移設問題で実質的な進展があることを望む」と述べ、日本側の方針について大統領来日までが一つの期限との見方を示した。また、今回の会談の内容について「沖縄の普天間代替施設に関する米側の計画を示し、それに対する日本側の疑問にひとつひとつ応えていった。今後もこの作業を継続することを確認した」と述べた。

モレル米国防総省報道官:14 日:記者会見で、ゲーツ長官の訪日とグアム協定について:「日米間で結ばれた協定は政党間ではなく政府間でのものであることを強調する機会となる」「日米間で合意されてきた内容について日本の新政府が十分理解できるよう情報を提供し協力していきたい」(ディフェンスリンク、10/14)

「米政府当局者」(産経電子版10/18)、「米国防総省高官」(フジテレビ、10/19)の談として、米側は、嘉手納飛行場への統合案には応じられないが、鳩山政権が現行計画通りキャンプ・シュワブ沿岸部への移設を認めるのであれば、沖縄県が求める滑走路の沖合移動も検討する用意もあることを明らかにした。沖合移動について、日本政府と沖縄との問題であり日本政府から正式な提案があれば検討することになる、との報道。現行計画の範疇であれば米側は柔軟に対応する構えを示しつつ鳩山政権での県外移設論を牽制。

ゲーツ米国防長官:20 日:記者団に対し、キャンプ・シュワブ沿岸部の滑走路予定地の沖合への微修正について容認する考えを示す:滑走路位置について「多少の柔軟性を持っているが、日本政府と沖縄の問題。」辺野古以外への移設候補地については「政治的にも運用上も不可能」と述べた。

ゲーツ米国防長官:来日中:普天間移設について「現行案が唯一可能なもの」「普天間移設なしにグアム移転なし」(琉球新報、10/22)

ライス在日米軍司令官:朝日新聞とのインタビューで:嘉手納飛行場への普天間飛行場機能の移設について:「運用要求基準を満たさない」(朝日新聞電子版、10/28)

モレル米国防総省報道官:29 日:嘉手納統合案について言及し、運用上不可能であり、日本の防衛上必要とされるものを提供できなくなると明言。
仲井眞知事:3 日:来沖中の前原沖縄相との会談で、普天間移設問題について日米合意のパーッケージが県内移設を容認する鍵となっていることを示した。:「普天間のベストは県外。恐らく大部分の県民がそういう選択だろう。しかしながら、米軍再編では海兵隊のグアム移転、嘉手納基地より南の施設区域の返還など大きな結果として目標になっており、県内移設もやむを得ない。ただし、環境アセスはしっかりやる。普天間飛行場は運用を減らして危険性を低減して欲しい」(琉球新報、10/4)

仲井眞知事:「現時点でも具体的な方針が示されていないことは残念だ。現実的かつ具体的な形で県外移設案を提示するのであれば、県としてもその実現を強く願う」と県外移設を容認する発言。これまで県内移設を容認してきた県の立場について「やむをえないものとして、これまで対応してきた」としながらも、「県外移設がベストだという考えに変わりはない」と述べ、県外移設が実現可能なら歓迎するとの見方を示した。(10/26)

仲井眞知事:30 日:記者会見で、嘉手納の現状について:「許容できる限界をはるかに越えている」(琉球新報、11/1)
11 月 北沢防衛相:9 日:参院予算委員会で、硫黄島への普天間代替施設移転案について:「地質的にかなり不安定な部分があり、遺骨収集が毎年行われている事情がある」(琉球新報、11/10)

鳩山首相:14 日:記者団に対し、普 天間飛行場の移設に関する閣僚級作業 グループでの議論について現行案の見 直しも含まれるとし:「オバマ大統領 は日米合意が前提と思いたいだろう が、それが前提なら作業グループを作 る必要はない」、結論を出す時期につ いて:「年末までと(大統領に)約束 したわけではない」「(来年1月の) 名護市長選が全く念頭にないというわ けではない」(時事通信、11/14) 岡田外相:15 日(来沖中):島袋名 護市長との会談で、結論を出す時期に ついて:「できるだけ年内に」(毎日 電子版、11/15) 岡田外相:16 日:普天間飛行場の閉 鎖を求める伊波宜野湾市町に対し: 「日米同盟を否定するならいいが、閉 鎖すれば済むという話ではない」(琉 球新報、11/17) 岡田外相:18 日:衆院外務委員会 で、普天間飛行場の県外移設が実現し なくても公約違反ではないと発言。 (沖縄タイムス 2 面、11/19)。

岡田外相:19 日:参院外交防衛委員会で、普天間飛行場移設問題について現行案容認を始めて示唆:「論理的にはあらゆる可能性がある」(読売電子版 11/19)

鳩山首相:25 日:米軍普天間飛行場移設について:「(在沖海兵隊の)グアム移転が行われることで、沖縄の負担が軽減されることも併せて考えねばならないという意見もある。トータルで沖縄県民の意思にどう応えるかが重要だ」と述べ、現行の在沖米軍再編計画がパッケージ(普天間移設+海兵隊グアム移転)となっていることを視野に、現行計画を選択肢として排除していないことを示した。(読売電子版、11/26)

長島防衛政務官:30 日:普天間飛行場移設問題について:「なかなか県外、国外は言うはやすしで、現実問題として厳しいというのは政権の中ではかなり共有された考え方だ」(琉球新報、11/30)
ケリー米国務省報道官:3 日:鳩山首相が普天間飛行場の県外移設を選択肢に含めていることについて:「われわれとどのような関係を築きたいかは、結局のところ日本政府の決定にかかっている」と発言。同問題をめぐる鳩山政権の決断が日米関係に影響を及ぼすことになるとの見方を示した。(産経電子版、11/4)

ケリー米国務省報道官:4 日:普天間移設問題について「(日本政府の結論に)米国は特定の期限を設けていない」(琉球新報、11/6)

オバマ大統領:13 日:日米首脳会談で:現行計画の完遂が必要だが、県側が求めている代替施設滑走路建設地の沖合修正について「調整することも可能」(沖縄タイムス 3 面、11/19:ワシントン共同電)

グレッグソン米国防次官補:17 日:普天間飛行場移設問題に関する日米閣僚級作業グループの初会合で:「現行案は唯一、実現可能な選択肢で、米政府全体の考え方だ。」(沖縄タイムス、11/18)

シーファー米国防副次官補:17 日:普天間飛行場移設問題に関する日米閣僚級作業グループの初会合で:米議会の予算編成手続きを説明し「米政府はグアム移転を支持しているが、不安定な状況が続けば議会の反応も変わる可能性も否定できない」(沖縄タイムス、11/18)

モレル米国防総省報道官:24 日:普天間飛行場移設問題に関する作業グループについて:「 目的は普天間代替施設と全般的な(在日米軍)再編合意を見て、これまでの交渉の結果合意された内容の実施を進める上で最善の方法を検討することである」(米国防総省ニュース、11/24)

ルース駐日米大使:30 日:普天間飛行場移設について:「米国としては、(日米合意した)普天間代替施設が、最も優れた、唯一実行可能な選択肢だと考えている」(琉球新報、12/1)
訪米先での松沢神奈川県知事の「辺野古建設しか解決できる選択肢はない」との発言を受け、同席した仲井眞知事は「ベストは県外だが、10 年以上かけてやってきた経緯を考えれば県内もやむを得ない」と述べた。(琉球新報、11/7)

島袋名護市長:12 日:「市は県の受け入れ要請に対して苦渋の選択をしたもので、誘致ではない」「政府から危険性がより早期に解決できる代替案が速やかに提示されるのであれば、これを歓迎する」として政府が県外移設を打ち出せばこれを容認する考えを表明。(琉球新報電子版 11/12)

仲井眞知事:15 日:岡田外相との会談後:嘉手納統合案について:「手間も暇もかかる。可能性がゼロとは言わないが、まとめるにしても10年かかるか、20年かかるか分からないぐらいの難しさだ」(産経新聞電子版 11/15)

仲井眞知事:25 日:全国知事会に出席した鳩山首相に対し、普天間移設問題について:「政府が(結論を)決める少し前に地元に示して欲しい。現地には頭越しでないやり方で進めてほしい」(琉球新報、11/26)
12 月 平野官房長官:4 日:在沖米軍再編計画で一括実施の「パッケージ」とされる日米合意について:「一つのものでないと駄目なのか、切り分けてできるのかを多面的に協議しないと(いけない)。一つが駄目なら全部が駄目となるのか」(琉球新報電子版、12/4)

前原沖縄担当相:4 日:閣議後会見で「(日米合意の移設先の名護市)辺野古が普天間の危険性を取り除くために最短かと言えば決してそうではない。」「仮に(移設先に)オスプレイ(MV22)が配備されれば環境影響評価をやり直さなければならない。」(琉球新報、12/5)

岡田外相:5 日:普天間飛行場の県外移設について:「検討する必要はあるが、さらに 5 年、10 年かかってしまう。普天間飛行場の固定化につながる」(琉球新報、12/6)

岡田外相:5 日:在沖米軍再編をめぐる問題について:「今の安全保障の環境を考えても米軍の抑止力は日本の安全にとって重要。日米同盟が弱まる状況だけは作りたくない思いと、沖縄の基地負担も減らしたい思いの間でのジレンマ。社民党が離脱すれば参議院で少数与党になり、障害が出てくるというジレンマもある」(沖縄タイムス、12/6)

北沢防衛相:9 日:訪問先のグアムで普天間飛行場機能のグアム移転について:「(現行の)日米合意からは大きく外れる話だ」と述べ、実現は困難との見方を示した。(朝日電子版、12/9)

鳩山首相:15 日:普天間飛行場の移設先について:「(沖縄)県民の思いも理解する中で、辺野古でない地域を模索し、できれば決める状況を何としてもつくり上げていきたい」(琉球新報、12/16)

北沢防衛相:15 日:同日、政府方針が出た事を受け、普天間飛行場代替施設完成の期限について:「2014 年というのは一つの合意だ。しかし政府方針が新しく出た。そこにあまり拘泥すると身動きが取れなくなる」(琉球新報、12/16)

鳩山首相:25 日:普天間飛行場移設問題について:「来年 5 月までに新しい移設先を含めて決定したい。そのための最大限の努力をする」(琉球新報、12/26)

鳩山首相:26 日:普天間飛行場のグアム移設について:「米軍の抑止力の観点から、グアムに普天間のすべてを移設させるのは無理があるのではないか」「グアムへの全面移設の可能性を検討すべき時はあった。グアムにはある程度は移るが、全部ということにはならない」(琉球新報、12/27)

岡田外相:29 日:普天間飛行場の移設先検討について:「辺野古という選択肢がなくなったわけではない。より良いものが出てくれば、そちらにすればいいし、出てこなければ現在の案が生き続けている」(沖縄タイムス、12/30)
ルース駐日米大使:2 日:来県中、沖縄の米軍駐留負担や在沖米軍再編について沖縄タイムス紙のインタビューで:「日米安全保障条約の役割を果たすと同時に沖縄の人々の負担軽減も重要だ。大統領も確実な実施を約束する。再編のロードマップはそのために作られた」「米軍も政権が変わった際、われわれのプロセスを通して、できるだけ早くロードマップを実施することがベストで実行可能だとの結論に達した。日本政府もWG(作業グループ)のプロセスを通じ、結論に達するだろう」(沖縄タイムス、12/3)

ウィルズバック米空軍嘉手納基地司令官:9 日:普天間飛行場機能の嘉手納基地への統合案について:「全兵力を一つの基地に配置するというのは、すべての卵を一つのバスケットに入れるのと同じだ。緊急事態の際に外敵が攻撃しやすくなり、任務の遂行は極めて難しくなる」(沖縄タイムス、12/6)

米領グアムのカマチョ知事:9 日:北沢防衛相との会談後、グアムの収容能力には限界があるとして普天間飛行場機能のグアムへの移転に反対する考えを示した。(琉球新報、12/11)

クローリー米国務次官補(広報担当):22 日:普天間移設問題は「日米にとって重要。日本と協議を続けていく」「現行の合意は沖縄の負担を軽減し、日本を防衛する能力を米国が維持するのに最善だ」(沖縄タイムス、12/24)
伊波宜野湾市長:1 日:普天間飛行場移設問題について:11 月 20 日に米軍が公表したグアム移転に関する環境アセスメント案を基に、「前政権が説明してきた沖縄からグアムへの移転は司令部気機能だけなく、実戦部隊の一体性を維持する形で普天間の航空ヘリ部隊がグアムへ移転するものだ」と述べ、そもそも県内に移設する根拠がないとの認識を示した。(琉球新報、12/2)

仲井眞知事:6 日:知事就任 3 年目を迎えるにあたってのインタビューで:普天間飛行場の県外移設について「ベストは県外とはっきり言っている。首相を含め関係者が『やる』とそういう体制を組めば、いつでも県外一本やりで行くと首相にも申し上げたが、そこがよく、まだ見えない」(琉球新報、12/6)